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スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(前編)

@渋谷コワーキングスペース「#HiveShibuya」
スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(前編)

スカイランドベンチャーズCEOの木下慶彦氏


プレゼン資料は後でいい


―プロジェクトを考えてから起業までにけっこう時間がかかることも多いのでしょうか。
 若手の場合、いつか起業したいんです、っていう人もいるんですよ。僕は起業するのに3年くらいかかると思っています。最初の1、2年目はわりと考えているだけ。3年目でプロジェクトを会社化していく。ここで毎年1、2年かかっていると新しいプロジェクトって生まれないと思うんですよね。

 DeNAとかグリーとかソニーとかも2年で新規事業を作るんですね。大きな会社ならそれを作るために2年で5〜6人がついてやっていけますよね。でもスタートアップする会社って、ここが結構1人だったり、ゆっくり考えたりしているケースが多くて。でも、考え始めて3カ月の段階でもいいんで投資するとスピードアップして行って、もっと会社が増えると思うんですよね。

 多くの場合はサービスができてからというか、プレゼン資料ができてから資金調達をしようとするんです。例えば銀行からお金を借りる時はそれがないと絶対無理なんですけど、僕らのような独立系ベンチャーキャピタルは資料とかそういうのはなくてもいいんです。もちろんプロトタイプなどはあったら嬉しいんですけど、なくてもよくて。そのときは長続きするかという素養だったり、自分が考える課題感から考えて意思決定している。

―新たなサービスや事業を生み出すために必要なことは何だと思いますか。
 大企業のように予算がある場合って、マーケットをみてから作るものを決めると思うんですけど、スタートアップから生まれるサービスっていわゆるプロダクトアウトで、サービスを先に作って世界的なサービスになっていったものだと思っています。結構たまたま作ったに近いプロダクトって多いと思う。それはみんな予期できないものだったはず。マーケットインでつくると他と重なるし、新しいマーケットを生み出せない。

 「アメリカでこの市場があるからこのサービスをやろう」というのではなくて、プロダクトアウト型の会社を僕は応援していきたい。そのプロダクトアウト型がなかなか始まりにくいんですよね。ちょっと前だったら一人で会社つくってとかあったかもしれないんですけど、今はいいアプリのサービスをつくるのであれば会社をつくって2、3人優秀なエンジニアを集めて、会社にしてやっていくのが一番いいと思いますね。

自分たちが没頭できるテーマ感を見つけてもらう


―スタートアップのサービスは、社会に対して不満に思っていることから作られることが多いように思います。
 そうですね。このコワーキングスペースに入っていて、最近プロダクトローンチした会社ですとVRを使ったベンチャーの「Cluster.」があります。これは「ひきこもりを加速する」というコンセプト。オキュラスというウェアラブルのデバイスとPCのアプリケーションを使って、バーチャル空間上でイベントができるというサービスです。ユーザー同士がバーチャル空間上でうろうろ動けるんですね。この空間上で講演などのイベントを行えます。前回イベントをした時は100人くらいが参加しました。

 このサービス、9カ月くらいの開発期間でつくっています。ファウンダーでもある加藤直人CEOはもともとエンジニアとしても優秀なんですけど、オンラインゲームが大好きなんですよね。オンラインゲームってこういう空間があったときにユーザーが自由に動ける世界観があって、逆にFBやツイッターとか現実世界とつながるものとはすごい遠いと思っています。いま、VRデバイスが発達してきている中で、こういうサービスが実現するんじゃないかなと思って、スタートしたプロジェクトなんです。オンラインゲームとVRを組み合わせて作り上げました。

 彼のもともとの出自ってゲーム大好きなところから来ていて。そういう人たちに自分たちが没頭できるテーマ感(課題感)を見つけてもらうのが必要です。ここまで完成したのは本当に最近ですよ。

 それに新規事業をつくるっていう風に考えると難しいじゃないですか。でも彼みたいのは一歩目を踏める可能性があると。こういう会社はもっともっと応援していきたい。CEOが26歳、共同メンバーが4人で、30歳くらいのメンバーでやってますね。

―スカイランドベンチャーズでは起業家にどういう支援をしているんでしょうか。
 技術者を紹介することや、こういう事業領域に詳しい人を紹介していってエンジェル投資家として投資してもらうとか。そのような場はつくるようにしていますよ。ただ、こういう場所は提供するんですけど、リクエストが来るまで何もしないのも大事だと思っています。情報は取りに来てもらう方がよくて、僕らもこういうのがあるよっていうのは提案するんですけど、過度にはしないようにしています。

 よく新規事業だと週1でメンタリングをする会社も多いんですけど、うちはやらないです。自分の時間をとことん使って欲しいと思っていて、場所とかイベントで人との出会いをつくるとかはガンガンやるんですけど、かといってやりすぎず、を心がけています。
(後編は5月4日公開予定)
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「投資とは?」「シード期のスタートアップとは?」という基本的な質問から、「天才ってなんだろう?」という話まで、じっくり伺ってきました。後編は「天才」にもう少し切り込みます。

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