ラグビー・五郎丸選手の集中力を育てた「ルーティン」の秘密

<情報工場 「読学」のススメ#4>『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』(荒木香織著)

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「集中した経験」を本番にスライドさせる


 『救急医 驚異の判断力』(PHP研究所)の著者である救急医の角由佳さんは、患者が搬送されてくるまでの5分から10分の間に、徹底したイメージトレーニングを行うという。ワーストケースを想定したシミュレーションをしておくことが、本番でのベストなパフォーマンスにつながる。

 こうした直前のイメージトレーニングには、「五郎丸ルーティン」と同様の効果があるのではないだろうか。わずかな時間しかないので、集中してシミュレーションせざるを得ない。その集中が、そのまま実際の患者さんの処置への集中にスライドする。

 もう一つ、ルーティンに似たものとして思い出されるのが「マインドフルネス」。グーグルなどの先端企業で導入されたことで注目される、短時間の瞑想によるメンタルトレーニングだ。マインドフルネスの瞑想では「いま、ここ」のみに集中する。未来への不安や過去の後悔などを頭から払い落とす。これまでに紹介したルーティンや救急医のシミュレーションのように「直後」ではないが、日常の仕事に瞑想時の「集中した経験」をスライドさせることが、安定したパフォーマンスにつながるのだと思う。

 対象は何であれ、「集中」するための自分なりの方法を見つけることが、メンタルを強くする最大のコツなのだろう。集中しやすいのが「決まった動作」であったり「時間のない中での準備」であったり「いま、ここ」であったりする。まずは自分が集中しやすい対象を探し出すことが重要だ。なお、荒木さんは、できるだけ「自分でコントロールできるもの」のみに集中し、「スタジアムが暑い」とか「対戦相手の体がデカい」など、自分の力ではどうにもならないことに対しては「思考停止」することを勧めている。

 自分なりの方法さえ見つかれば、想定外の事態や劣悪な環境、大きなプレッシャーのかかる場面であっても、「今するべきこと」に気持ちを集中させられるようになる。「メンタルの強さ」とは、どんなにマイナスの条件が揃っていたとしても、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えられることにほかならない。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)


『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』
荒木 香織 著 講談社(講談社+α新書)
192p 840円(税別)

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

冨岡 桂子
情報工場

『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』から、「ここ一番」の時に必要な“無心”な集中力を持続させるポイントは、最終ゴールまでのプロセスを分割して各段階で行うことのみにフォーカスし、その間、最終ゴールには思いを巡らせないことのようです。次に大切な勝負を控えたビジネスパーソンの皆様も、目標をいったん設定したら、あとはそれを意識せずに目標までの道のりを分割した各プロセスのみに“無心”に集中してプロジェクトを進めてみると案外うまくいくかもしれません。

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