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IoTの最前線で何が起こっているのか。最もエキサイティングな時代を勝ち抜く条件

先進事例を概念化し自社のビジネスにつなぐ

コマツの泥臭いIoTが花開く


 「IoTという言葉には宙に浮いたイメージがあるが、実際は泥臭いもの。コマツもそうした社風だからIoTの活用にマッチした」と話すのはコマツの黒本和憲専務執行役員。同氏は、巨大鉱山で稼働するダンプトラックの無人運行システム開発に初期から携わり、工場に比べて難しい鉱山のルール化を果たした。

 無人運行システムは「顧客が望んだのではなく、我々から提案した」と黒本氏。それは建設現場全体を見据えた新事業「スマートコンストラクション」にも反映されている。 そして「コンシューマーの世界で起きたことが世の中全体を覆う。土木の世界でもIoTをより活用するようになる」と見通す。

ロボットのインテリジェント化


 「人が生み出すデータを扱ってきたが、IoTの急速な普及で機械が生み出すデータをいかに処理するかが重要になる」と話すのは、プリファード・ネットワークス(PFN)の西川徹社長。同社は16年度中にファナック、米シスコシステムズ、米ロックウェル・オートメーションと共同で工場用IoT基盤の提供を始め、まずはファナックのロボット用遠隔監視システムに適用していく。

 ドイツのインダストリー 4.0は、ロボットをインテリジェントにすることには目が向いてなく、センシングされたデータ処理にフォーカスされている。西川社長は「もっと大きなイノベーションを起こせるはず」と話す。

アナログな部分をAIへいかに取り込むか


 具体的には、AIをロボット制御そのもの、最適化そのものに使っていくこと。協調し合うロボットで、生産効率を10倍にも 100倍にもするような仕組みを目指すという。そのカギは「アクチュエーターやセンシングのアナログの部分をいかに理解して、そして人工知能に取り込んでいくかというところ。もう1つ重要な領域はネットワーク。IoTでモノ同士が協調できるようになるので、ネットワークに高い性能が要求される。つまりレイテンシー(遅延)の問題をいかに解決していくか」(西川社長)だという。

 経営共創基盤の塩野誠取締役はAI、ビッグデータのビジネス活用について「どの産業のどのバリューチェーンで使ったら一番付加価値が出るかを冷静にみるべきだ」と話す。工場用IoTは、機械だけで動いている世界であり、生産性が全てなので、結果が出てしまえば顧客にも説明しやすい。また鉱山のような過酷な環境などで、人が介在せず全てオートメーション化するのも非常にメリットが高い。

自動運転とシェアリングエコノミー


 AIに関しては自動運転でも、かなり近いタイムスケールでイノベーションを起こしていくはずだ。人がドライビングしていた状況から、大量のセンサーデータを人工知能が同時に処理して、人よりも安全な運転、交通システムを実現することができる。車間距離をもっと縮められる。道路という有限の資産に対して、車間距離を取り過ぎるという問題があり、ロボットが運転したらもっと車間距離が縮められ、もっと早く目的地に着ける。
 
 自動車の「所有」の概念も変わってくるだろう。マッチングのシステムがよくなっていつでも使えるとなると、わざわざ所有する必要はなくなる。東京大学の坂村健教授が提唱するIoTからAI、センサー、組み込み技術、それにネットワークが総体的に協力し合って一つのことを達成するアグリゲート・コンピューティング。坂村教授は「それを活用して、シェアリングエコノミーを完成させることに一番興味がある」と話す。

 そしてGEのイメルト会長は「自身が過ごしてきた過去のどんな時代よりも、製造業にとって最もエキサイティングな時代が到来した」と断言する。

「人」に着目することで解決策が見つかる


 また「IoTビジネスはモノをつなげるという発想で考えがちだが、課題を解決するという意味ではむしろ人に着目する方が解決策としてのIoTに結びつくことが多い」と指摘するのはウフル上級執行役員IoTイノベーションセンター所長の八子知礼氏。例えば製造業に身を置く人であっても、建築やインフラ領域でのドローン活用が自社のプロダクツやサービスに結びつくセレンディピティ(予想外の発見)を大切にしなければいけない。
●IoT Conferrence 2016 Presens by IoTNEWS●

 5月18日(水)10時ー19時30分(大崎ブライトコアホール)
 「IoTの第一人者から、イノベーションに必須となる他業態の知見も取り込み、自社のIoTのイマジネーションを高めよう」
 <登壇者>
 ▽ウフル上級執行役員IoTイノベーションセンター所長 八子 知礼氏
 ▽コマツ執行役員スマートコンストラクション推進本部本部長 四家 千佳史氏
 ▽インテル戦略企画室オートモーティブ・ユニットチーフ・アドバンストサービス・アーキテクト兼ディレクター
  野辺 継男氏
 ▽フレームワークス代表取締役社長 秋葉 淳一氏
 ▽経営共創基盤パートナー取締役マネージングディレクター 塩野 誠氏
 ▽ソラコム代表取締役社長 玉川 憲氏
<「IoT Conferrence 2016」の申し込みはこちらから>
IoT Conferrence 2016

   
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
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