水素社会実現へ、供給網構築など取り組み広がる中部の今
2024年は中部圏で、水素活用に向けた取り組みが活発化した1年だった。中部圏の自治体や経済団体などで構成する「中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議」は、水素やアンモニアなどの中部圏におけるサプライチェーン(供給網)の構築を目指す企業との相互協力に向けた基本合意書を11月に締結。今後、企業などと連携しながら、国に対しても支援を要請していく姿勢を示した。
同会議に参加する名古屋市は、初となる水素技術ワークショップを10―11月に開催。水素関連商材の展開を模索する企業など、延べ300人超が参加し、水素の利活用で先行する企業の取り組み事例などが紹介された。大企業だけでなく、中小企業にも水素関連事業に挑戦してもらうことで、水素の産業化や市の経済活性化につなげていく考えだ。
企業での取り組みも進む。東邦ガスは6月に水素製造プラントを知多緑浜工場(愛知県知多市)に開所し、水素の供給を始めた。水素の利活用に慎重な姿勢を示す企業も多い中、増田信之社長は「日本で一番安い水素を作ろうというコンセプトで取り組んだ」と説明。製造時に発生する二酸化炭素(CO2)の回収など、コストのかかる取り組みはあえて行っていないが、顧客の要望があればグリーン化などに対応できるという。
日本特殊陶業は、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを通じた水素・炭素循環に関するスタートアップへの投資など、「水素の森」プロジェクトを推進する。小牧工場(愛知県小牧市)では実証実験が可能な拠点の整備も進めており、スタートアップとの連携加速が見込まれる。
次世代のエネルギーとして注目されている水素だが、コスト面やインフラの整備など、課題も多い。ただ、市場機会が生まれることは間違いなく、企業は動向を見極めながらも、水素社会が到来した場合に備え事業開発や推進体制の構築を進める必要がありそうだ。