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LLM強化・GPU効率2倍…生成AI商戦の新展開へ、NECが戦いの狼煙を上げた

LLM強化・GPU効率2倍…生成AI商戦の新展開へ、NECが戦いの狼煙を上げた

自社の最新技術を披露する西原CTO

自律的に行動する人工知能(AI)エージェントを投入―。NECは27日、玉川事業場(川崎市中原区)で開いた研究開発の発表会で、生成AIや生体認証などの最新技術を披ろうした。最高技術責任者(CTO)である西原基夫執行役EVPは「当社が目指すAIエージェントとは進化・成長し続ける動的なITシステムだ」と、生成AI商戦の新展開に向けて、戦いの狼煙(のろし)を上げた。(編集委員・斉藤実)

NECは2025年度末までに生成AI関連事業で売上高約500億円を目指す。目玉として、大規模言語モデル(LLM)「cotomi(コトミ)」の強化に加え、生成AI活用のカギとなる「AIエージェント」群を25年1月から順次投入する。

AIエージェントは利用者が依頼したい業務を入力すると、コトミが自律的にタスク(業務処理)分解して必要な業務プロセス(手順)を設計。それぞれのタスクに最も適したAIやITサービスなどを選択し、業務を自動で実行する。

第1弾として経営計画や人材管理、マーケティング戦略など、社内外の情報を包括的に検索して意思決定を行う業務手順の自動サービスを立ち上げる。

また、生成AIの適用拡大に向けて、多くの時間をかけて人手で行っていた複雑な図表の読み取り作業を自動でデータ化して利活用するサービスも25年1月から始める。

図表の意味や形式を考慮した処理を行うことで、文字や図表の間の位置関係によって表される文脈を損なわずに、自動で正確に読み取ることが可能。業務マニュアルや商品カタログのように図表を多く含む書類などで生成AIの活用が期待される。

また、損益計算書やプロセスフロー図、組織図など、専門性の高い業務特化した図表をデータ化し、AIのファインチューニングに必要な追加学習や「RAG(ラグ)」と呼ばれる社内文書検索システムに活用することで、専門業務に特化したAIを構築できる。  コトミの強化では性能を高め、日本語LLMの性能評価テスト「Japanese MT―Benchmark」において、世界トップ水準のLLMに匹敵する精度を達成した。

併せて、画像処理プロセッサー(GPU)内部の演算素子の並列処理を効率化することで、GPUの演算効率を従来比2倍に高める技術も開発した。生成AI活用で課題となる電力問題に対して「学習時の電力消費だけでなく、今回は推論時に使う電力をいかに減らすかに焦点を当てた」(西原CTO)。

これら新技術に加え、LLMを軸に顧客のデジタル変革(DX)を支援する人材も強化する。「LLMのスキルを身につけた人材は現在、450人。今後1000人規模に拡大する」(山田昭雄SVP兼AIテクノロジーサービス事業部門長)計画だ。


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日刊工業新聞 2024年11月28日

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