AI、ロボット、VRが、人間の意識と感覚を“拡張”する未来

<情報工場 「読学」のススメ#3>『スーパーヒューマン誕生!』(稲見昌彦著)

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ありえない感覚の体験が創造性につながる


 本書の後半では、人間の身体機能だけでなく「意識」や「感覚」までも拡張する機器やシステムが紹介される。頭部にかぶせるヘッド・マウント・ディスプレイを使って、周囲の実際の環境とは異なる仮想現実(VR)を経験させる。その際に、どんな世界を見せるかによって、通常経験できないような新しい感覚が得られる。

 たとえば、あたかも「第三の目」があるかように、視界に「自分を後ろから見た映像」を混ぜる。幽体離脱したように自分の背中を見ることができるのだ。また、「時間をずらす」研究も進められているそうだ。「代替現実(SR)システム」といい、現在のライブ映像と、少し前の過去映像を、ヘッド・マウント・ディスプレイの中で切り替える。すると、現実感と時間感覚があやふやになってくるのだという。

 「オムニプレゼンス」という、誰かが旅をした時などの感覚を遠隔地でリアルに味わえるサービスもある。これは、言わば体験を「シェア(共有)」するもので、自宅でヘッド・マウント・ディスプレイをつけるだけで、遠方に行ったのと同様の感覚が得られ、現実感のある記憶がつくられる。

 もちろん、こうした技術には悪用のリスクがつきまとう。だが、セキュリティに十分に配慮しながら、挑戦を続けていくべきだろう。時空を超えた、これまで得られなかった経験や感覚・視点をさまざまな最新デバイスで手に入れられれば、人間の創造力や発想力は飛躍的に伸びていくことが期待できる。そしてそれによってAIやロボット技術がさらに進化していくという、「正のスパイラル」が生まれる可能性も高いのだ。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『スーパーヒューマン誕生!』
人間はSFを超える
稲見 昌彦 著 NHK出版(NHK出版新書)
240p 780円(税別)

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

冨岡 桂子
情報工場

人工知能の世界的権威であるレイ・カーツワイルは、2045年に「人工知能が人間の知能を超える時」がやって来るだろうと予言しています。素人からすると、あまりに現実味がなくイメージがなかなかわきません。 ですが本書にあるように、人工知能を人間の能力を拡張できる道具として捉えると、多くの発想が生まれ、未来に楽しい期待ができそうです。人を排除するという意味での効率化ではなく、創造力にあふれた新しい世界をどう作っていくかに対する答えの一つは、そんな視点を持つことかもしれません。

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