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NIPPON EXPRESSホールディングスがテックスタートアップと描く「物流改革」の未来

NIPPON EXPRESSホールディングス(NX)が、スタートアップとの共創を加速している。時代や環境が急速に変化する中で、NXグループが蓄積した知見や経験を生かして、新たな価値を迅速に提供するためだ。50億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを立ち上げ、DXや環境・サステナブル領域のサービスを手がけるスタートアップを中心に出資している。シンガポールに拠点を置く、SWAT Mobility(SWAT)は投資先の1社。複数地点で散発的に発生する移動需要に対して、最適なルートを瞬時に導き出すソリューションについて、日本を含む世界8カ国で展開する。NXでスタートアップとの共創を推進するグローバル事業本部の青浩司コーポレートベンチャリング部長と、SWAT Mobility Japanの末廣将志代表取締役に出資の経緯や共創の現状、今後の展望を聞いた。

-今回の出資に向けた話し合いは、SWATがNXに問い合わせたことから始まったと聞きました。なぜNXに問い合わせたのですか。
 末廣氏 NXはグローバルに物流事業を展開しています。我々も日本だけではなく、アジアを中心に展開していますし、今後はその他の国にも展開したいと考えています。そのため、NXのような物流分野のグローバル企業は相性がよいと考えていました。最初の接点は2021年で、NXのシンガポール法人に伺い、協業の可能性を議論しました。その後、出資を募ろうと考えた時に、改めて問い合わせました。

-出資を相談した際の印象はいかがでしたか。
 末廣氏 我々の話を真剣に聞いて頂き、自社が抱えている課題を積極的に示して下さいました。スタートアップとの協業に非常に前向きという印象を持ちましたね。グローバル企業ということで、我々のような外資系企業に対する抵抗の低さも感じました。

-末廣さんにお会いした際の印象を青さんは覚えていますか。
 青氏 末廣さんやSWATの最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)にお会いして事業概要を伺ったのですが、そのときに、ソリューションの領域が我々の事業ととても近かったことはもちろん、彼らの真摯な受け答えから誠実な人となりを感じ、直感として投資する方向で検討したいと思いました。お互いにグローバルの事業展開を前提にしており、ストレスなく、話を進めやすい部分もありました。

NIPPON EXPRESSホールディングスグローバル事業本部コーポレートベンチャリング部長の青浩司氏

-SWATのソリューション自体はどう評価されましたか。
 青氏 配送の仕事をトラックドライバーに最適に割り振る配車マンは、熟練の技術やノウハウを持っており、彼らの高齢化に伴う引き継ぎは課題になっています。(SWATのソリューションの採用により)それをデジタル化して社内の仕組みとして取り込めると考えました。特に、最適な配車を高速に導き出せる部分がよいですね。物流の現場では、今日すぐに配車計画を決めたい場面が多くありますから。国内企業が手がける類似のソリューションもありますが、そうしたソリューションの優位性は、出資を決断する大きな要因になりました。

-末廣さんは自社ソリューションの優位性をどのように考えていますか。
 末廣氏 最適なルートを計算するためのアルゴリズム(ダイナミック・ルーティング・アルゴリズム)を開発しており、それが技術的な優位性になっています。このアルゴリズムが、他社の類似サービスに比べて、より少ない車両台数で貨物を運べる計画をより早く導き出します。荷積み荷下ろしの作業時間やお客様の受け取り可能な時間枠など、配送条件を順守しつつ、配送先への左付け設定や車両ごとの配送エリアの限定など、実際の現場で必要となってくる要素を考慮して、最適な配車計画を算出できる点も強みです。このアルゴリズムは、エンジニアの努力のたまものです。シンガポールに拠点があり、世界中から優秀なエンジニアを採用しており、それが高い技術力につながっています。

SWAT Mobility Japan代表取締役の末廣将志氏

-SWATはシンガポールで創業し、2020年に日本に進出しました。その経緯を教えて下さい。
 末廣氏 効率よく相乗りができる仕組みを作り、交通や環境の問題を解決したいという思いで創業しました。その中で、日本では人口減少や高齢化により、地方で路線バスなど公共交通の維持が難しくなっており、路線バスとタクシーの中間のような相乗りサービスを移動需要に基づき提供する新しいモビリティが必要ではないかと考えました。そのサービスを我々の技術で支援できると考え、進出しました。進出後は三鷹市や白馬村、加賀市など多数の自治体で我々のソリューションを使ってもらいました。その後、(トラックドライバーの労働時間に上限が課され、輸送能力が不足する)「物流の2024年問題」などがあり、物流の課題解決にも我々のソリューションが生かせると考え、物流分野に参入しました。

-物流企業として、物流の2024年問題に対するSWATのソリューションの有効性をどう感じられていますか。
 青氏 物流の2024年問題への対応は喫緊の課題で、(SWATのソリューションが実現する)より少ない台数による配送計画は重要になります。すでに、関東の複数のエリアで最適な配車計画をSWATのソリューションでシミュレーションする実証実験を始めています。

-実証実験を進める中で気付いたことはありますか。
 青氏 配車マンによる配車計画は、一般に一定のエリアで区切って検討します。そのエリアから外れると、たとえ隣接している場所でも配送先の対象になりません。SWATのソリューションの場合、そうしたエリアの概念を基本的に度外視して計画します。そのシミュレーションを見たところ、人間の頭ではまず計画しない結果だと感じました。エリアの考え方を変えるような、ひらめきが得られました。

-実証実験について今後の計画を教えてください。
 青氏 当社の経営計画では重点5産業を掲げ、産業特性に応じたロジスティクスソリューションを提供しています。そのうち、テクノロジー産業とモビリティ産業でSWATとの共創活動を進めています。国内においては、京都や滋賀で配車シミュレーションを実施します。また、海外ではインドやシンガポール、フィリピンで実証する計画でいます。当該エリアは、自動車関連の日系メーカーが進出し、それに伴い多くのサプライヤーが帯同しているエリアで、輸送を最適化したいと考えています。モノを作る時は部品を調達して、工場で生産して完成した製品を市場に販売します。その後は、アフターパーツを調達してメンテナンスや修理をする流れもあります。輸送業務はそれぞれのタイミングで、必ず紐付きます。特にアフターパーツの輸送は計画の変動が大きい領域になりますので、その領域で輸送を最適化するモデルを作りたいです。

-NXによる実証実験の計画はグローバル展開を目指すSWATにとっても後押しになりますね。
 末廣氏 我々としては、やはり(NXのような)パートナーと一緒に市場を見つけた国に進出する形が適していると考えています。フィリピンはすでに現地に社員が常駐しており、交通のプロジェクトを実施した実績もあります。インドは新しい市場ですが、英語が使いやすい国ですし、問題なく対応できると考えています。

-NXは自社データの活用による新しいビジネスも計画しているそうですね。
 青氏 社内には配送に関わるデータを集約したデータウェアハウスがあります。それを覗くと、今まで気付かなかった傾向が見えてきます。まだ具体的なことは申し上げられませんが、そうしたデータを活用し、SWATの技術を掛け合わせることで、新たなサービスの切り口が生み出せるのではないかと考えています。

-SWATの今後の成長に対する期待はいかがですか。
 青氏 我々の資本注入で新しい人材を採用したり、我々との仕事も生かしたりして成長していただき、物流業界全体の工程の最適化につながればと期待しています。また、我々も事業会社ですので、顧客に対して新しい価値を共に提供できるような関係を作っていきたいと考えています。

-SWATは今後をどのように展望されていますか。
 末廣氏 物流はまだまだ新規参入の領域です。それをまずは伸ばしたいです。日本か海外のどちらかはわかりませんが、成功事例を出して横展開したいですね。そして世界を広く見て、よきパートナーであるNXと一緒に海外展開したいと思っています。

「NXグローバルイノベーションファンド」専用ウェブサイト
 URL: https://www.nipponexpress-holdings.com/ja/cvc/

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