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富士通はなぜDIY工房の運営を始めたのか

社内外のアイデアや技術を組み合わせる「共創」を拡大
富士通はなぜDIY工房の運営を始めたのか

4月にオープンした「TechShop Tokyo」


交流から価値創造を生む人材を育成


日刊工業新聞2016年3月17日


 社内外のアイデアや技術を組み合わせ、新しい価値を創り出す「オープンイノベーション」が注目されている。カギとなるのは人材育成と場づくり。欧米ではサイエンス(科学)、テクノロジー(技術)、エンジニアリング(工学)、マスマティクス(数学)の頭文字からなる「STEM(ステム)」という造語もあり、産業界からはイノベーションを生み出すSTEM人材の育成が望まれている。日本では「共創」という言葉でオープンイノベーションが語られることが多く、価値創造への挑戦はこれからが本番だ。

 富士通は若手社員らを中心とする社会人と、学生らがチームを組んでアイデアを競う共創イベント「大ガッコソン」を2月に開いた。2日間にわたり、横浜と神戸をオンライン接続し同時開催した。

 テーマは「常識を覆せ。わたしの考える未来の大学」。計113人の参加者が東西12チームずつに分かれ、それぞれ未来の大学を想定して、そこで得られる体験を描き、「学びの新たな形」を実現する仕組みをアイデアとしてまとめ上げ、プレゼンテーションした。その後、審査で選ばれた6チームが3月7日の決勝プレゼンに挑み、優勝チームが決定した。

 大ガッコソンを振り返り、代表者の柴崎辰彦富士通インテグレーションサービス部門戦略企画統括部長は「共創は新しい世の中をいっしょに作ろうと、一致団結することだ。売り上げをシェアすることで成り立つ協業とは違う」と話す。その上で「1カ月前までは皆が他人同士だったが、イベントを通して一つのチームになれた」と強調した。

新しい就業体験を


 富士通は「あしたのコミュニティーラボ」というオープンイノベーションの活動を展開している。大ガッコソンはその一環であり、「多様な価値観や背景を持った人たちが立場を超えて共創する人材育成の場」として推進。新しい形のインターンシップ(就業体験)としての位置づけもある。

 オープンイノベーションの新しい場としては、東京・赤坂のアークヒルズ内に開設した会員制のDIY工房「テックショップトウキョウ」も注目だ。富士通の子会社であるテックショップジャパン(東京都港区)が、メーカーズムーブメント(製造業革命)の源泉となるSTEM人材の教育で実績を持つ米テックショップ(カリフォルニア州)の協力を得て立ち上げた。

 企業やクリエーター、学生、一般の参加者など幅広く会員を募り、会員同士の交流からビジネスや技術革新を生み出す場として発展させていく考えだ。連日見学希望者が後を絶たず、予約不要のツアーを1日4回実施している。2017年度までに会員数1000人を目指す。
(文=斎藤実)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
3年前のメイカーズムーブメントと何が変わっているのか。確かに最近は大手企業は「共創」「協創」という言葉が出始めている。ただオープンイノベーションと言っても各社で考え方や言葉の意味、実践内容が違う。単なる社内のガス抜きに終わらせないためにも、目的を明確化する必要がある。

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