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水も木も使わず、石灰から作られた紙が世界を変える!?

Japan Venture Award 2016 東日本大震災復興賞受賞 TBM
水も木も使わず、石灰から作られた紙が世界を変える!?

山崎敦義社長


トライアスロンのような資金調達


 命の恩人は日本で現れた。2013年2月6日、経済産業省イノベーション拠点立地推進事業「先端技術実証・評価設備整備費等補助金」に採択されたのだ。全く実績がなかったベンチャー企業が採択されるのは珍しいと山崎氏は話す。これにより工場設備投資のかなりの部分が補てんされた。今後の展望が見えてきたこともあり、出資者も増えていった。第一期に15億円の調達に成功し、工場を完成させた。「一番ハードルの高い資金調達だと思っていましたが、経産省が採択してくれていなかったら今の自分たちはない。親身になって相談に乗ってくれ、本当に感謝しています」。

 工場はちょうど2年後の2015年2月6日に完成した。採択されてから2年以内に工場を建設しなければ予算が下りないことになっており、機械代金の支払い、工事などの当面の資金調達にも苦労した。「トライアスロンのようだった」と山崎氏は表現する。

 平行して、製品そのものの研究開発には資金を惜しまずに3年ほど取り組んだ。当初輸入していたストーンペーパーには問題がいくつかあったのだ。紙の重さと同等にするための比重調整、品質安定化、さらに製造方法も改めた。従来はビニール袋の製造と似た工程だったが、平らなものを作る製造工程でなかったため、ムラができていた。そこで、同社では粉末石灰とペレット状のポリエチレンなどを混ぜ、圧力をかけて押し出したものをシート状に引き伸ばす方法をとった。元日本製紙専務取締役の会長が技術顧問となり、外部との連携も含め5~6名で研究を進めた。

 海外ではストーンペーパーのニーズが高いが、日本では石灰から作られるプラスチック製品のニーズが高い。一般消費財になりえる量産型製品、高付加価値製品両方での製品化に向けて、他社と共同で研究開発を進めている。
現在は紙に比べ、製造コストが高いことがネックの一つ。素材、省エネ、機械の効率化に順次取り組んでいる。

東北から世界へ


 復興支援のため、宮城県白石市に工場を構えた。「震災後、海外の方がたくさん支援してくれたのを被災地の子供たちは見てきた。その子たちが成長して、日本の技術を持って海外で役に立つという流れができれば理想的だなと。せっかくならそういったことを支援していきたい」。

 さらに、東北新幹線白石蔵王駅からすぐの場所であり、東京や海外のお客さんが見学に来るには便利だという点も意識した。工場では地元の若者を採用。中東、アジア、ヨーロッパなどさまざまな国の人が視察に来ることが刺激になる。期待されていることを肌で感じることが、やりがいにつながる。2017年には量産工場を立ち上げ予定だ。これが世界展開時にはマザー工場になる。生産能力は年3万トン。製紙工場と比べるとサイズが小さく、展開しやすい。

 工場完成後には、シンボリックなイベントとして最適と判断しミラノ万博を協賛した。同社LIMEX(ライメックス)製品が採用され、世界にアピールできた。「数年内には海外工場を作り、当初の目的である世界で活躍する人材の育成、世界に影響を与える製品を実現していきたい」と意気込む。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
水も木も豊富な日本では、それらがない地域のことが容易に想像できません。しかし世界各地にはすでに水不足によって甚大な被害を受けている地域があります。日本に軸足を置きながら、世界の今後を見据えて事業を動かす意志が、大勢の人に応援される所以です。

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