出荷額4年ぶり減少へ…建設機械、成長の踊り場を迎えた要因
これまで右肩上がりできた建設機械各社の業績が踊り場を迎えている。日本建設機械工業会(建機工)による2024年度の建設機械出荷額予想は、前年度比5%減の3兆1610億円と、4年ぶりの減少となる見通し。欧州やアジア向けの輸出が金利高止まりの影響で大きく落ち込み、頼みの北米輸出も円高や金利高止まりで黄信号がともる。各社は対策として値上げや鉱山機械、部品などアフターセールス事業の強化に注力し、収益悪化を食い止める方針だ。(編集委員・嶋田歩)
北米依存 在庫抑制・円高 “冷や水”
コマツは24年4―6月期の売上高で、欧州が前年同期比8・5%減、アジアが同10・8%減とそれぞれ低迷した。日立建機も同様に欧州が同13%減、アジアが同15%減だった。またコベルコ建機、住友建機も欧州向けの売り上げについては、景気低迷の影響で減少が続くと見る。アジアは金利高止まりに加え、最大市場のインドネシアが大統領選挙の影響などで落ち込む見通しだ。
各国市場がさえない中、各社が期待を注ぐのが北米市場だ。建機工の仕向け先別出荷金額での北米の比率は、20年度の19・2%から21年度に24・3%、22年度に30・1%、23年度に32・3%と着実に上昇。24年4―6月期は36・4%とさらに高まり、欧州の10・5%やアジアの6・6%、そして日本国内の29・4%も上回って最大市場になっている。国内や欧州、アジアの不振を北米の伸びでカバーする一方、北米市場への依存度がそれだけ高まっていることを物語る。
ただ、24年度の北米市場は期待ほどには伸びていない。23年の品不足の反動でレンタル店や代理店の在庫が積み上がっており、金利高止まりの影響もあり、在庫をこれ以上増やすことに慎重になっているためだ。
加えて、最近の円安是正・円高反転傾向も冷や水を浴びせる。1円の円高によりコマツは営業利益で40億円、日立建機は調整後営業利益で15億円、それぞれ押し下げられる。現時点では各社の想定レートと実際の為替レートでまだ余裕があるとはいえ、米国の利下げや大統領選挙の結果次第で一段の円高進行があれば、収益計画に狂いが生じかねない。
収益改善 鉱山機械・アフター強化
収益貢献にコマツが期待を寄せるのは鉱山機械と値上げだ。菱沼聖史執行役員は「足元はインドネシアの需要が悪い影響が出ているが、他の地域は堅調の予想で、取り返せるとみている」と話す。
日立建機は引き続き北米市場の強化を推進。「下期になれば米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き下げの効果で代理店の在庫抑制も和らぐだろう。ファイナンス会社も盛んにキャンペーンを行って顧客の需要を喚起する」(松井英彦執行役常務)とみる。
コベルコ建機、住友建機の2社はコスト上昇の抑制、固定費削減とともに、アフターセールスの強化に力を入れる。住友建機はアフターサービスについて「国内では機械の管理台数も増えているため利益に寄与しやすい」(広報担当者)と捉える。
建機工は25年度の出荷額予想を24年度比2%増の2兆2319億円とし、再び成長軌道に戻るとみている。山本明会長(コベルコ建機社長)は「現在の減少は一過性だと思っている。増加基調は変わっていない」と強調。次の成長期に備え、各社とも我慢のしどころだ。
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