欧米・中国との格差顕著…生成AI、日本は利用低調
欧米・中国との格差顕著
日本の生成人工知能(AI)やメタバース(仮想空間)の活用が欧米と比べて低調な状況が続いている。総務省がまとめた2024年版情報通信白書によると、生成AI、メタバースを使っていると答えた日本の割合はそれぞれ9・1%、6・1%にとどまり、20%以上の欧米や中国と大きな差があった。ただ、今後使ってみたいと回答した日本の割合は生成AIで60%、メタバースで50%超あり、潜在的なニーズは強いことがうかがえる。(編集委員・水嶋真人)
情報漏えい・著作権、懸念強く
生成AIの業務活用も欧米や中国と比べて低い結果となった。各国の企業に、業務での生成AIの活用方針が定まっているかを質問したところ「活用する方針を定めている」と答えた割合は日本で42・7%。約80%以上だった欧米や中国の半分程度にとどまった。
メールや議事録、資料作成などの補助に生成AIを活用していると回答した割合でも日本は46・8%だったのに対し、米国では84・7%、中国は84・4%と大きな差があった。総務省は「海外では顧客対応など多くの領域で積極的な利活用が始まっている一方で、日本企業では社内向け業務から慎重な導入が進められている」と分析している。
メタバース・デジタルツインの業務活用について、商品開発や製造、物流などの業務別に導入の検討を尋ねた質問でも「有効だと考えており、すでに導入済み」と答えた割合が日本では軒並み10%未満だったのに対し、約45―60%が導入済みと回答した米国などと差がついた。
一方、生成AI活用について日本では約75%が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」「斬新なアイデアやビジネスイノベーション(技術革新)が生まれる」と答えている。
生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)では、NTTが3月に日本語に特化した「ツヅミ」の商用提供を開始。KDDI傘下のELYZA(イライザ、東京都文京区)も米メタのLLM「Llama(ラマ)3」を基にした高精度の日本語LLMを6月に発表している。特定の業務に特化した日本語LLMの開発競争も本格化しており、今後、国内企業での利用増が期待できる。
ただ、今回の調査では生成AI活用に伴い「社内情報の漏えいなどセキュリティーリスクの拡大」「著作権などの権利を侵害する可能性」について懸念を示した日本企業が約70%あった。
LLM開発では米オープンAIが都内にアジア初となる拠点を新設し、日本企業向けに、日本語に最適化したLLMの提供を始めている。総務省は「LLM開発はオープンAIのほか、巨額の投資が可能で日々大量のデータを収集している(欧米のGAFAMなどの)ビックテック企業がリードしている」と説明。「データの取り扱いの透明性、公平な市場環境の確保、日本の競争力強化に向けた対策などが求められる」と指摘する。
情報通信研究機構(NICT)は民間企業などのLLM開発に必要な大量で高品質の日本語中心の学習用データを整備している。こうした産官学が連携した安全で高品質な国産LLMの開発も必要となりそうだ。
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