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関係者は安堵…JSTの大学ファンド運用黒字化、昨年度収益率10%

関係者は安堵…JSTの大学ファンド運用黒字化、昨年度収益率10%

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科学技術振興機構(JST)が運用する大学ファンドの2023年度運用成績は収益率が10%、収益額は9934億円の黒字となった。このうち国際卓越研究大学などへの助成財源となる実現益は1167億円。22年度分と合わせた1848億円の3分の1の616億円が助成に使えることになる。22年度が赤字だったため大学関係者は安堵(あんど)した形だ。(小寺貴之)

23年度は10兆円規模で通年運用した初年度に当たる。収益率は10・0%で運用資産は10兆9649億円に増えた。中でも株式の伸び率が大きく、収益率は39・7%、収益額が7749億円と貢献した。保有時価総額順に米マイクロソフトやアップル、エヌビディア、アマゾンなど米国株がけん引した。

大学ファンドは運用利率3%、年間3000億円の支援額捻出が目標だ。10%の収益率は目標を大幅に上回った形だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の23年度の収益率は22・7%。ポートフォリオを構築中の大学ファンドとしては健闘したといえる。増えた資産はすぐに売却せず、長期的な安定運用を目指す。

ファンド運用益は卓越大への助成と博士課程学生などの若手人材育成に利用される。卓越大は東北大学が第1号に認定され、25年度分として百数十億円が拠出される見込みだ。博士支援は23年度補正予算で499億円が確保されている。ただ25―26年度分が400億円ほど足りないため、ファンド運用益から年間200億円程度が充てられる計算になる。

助成財源は22―23年度分を合わせて1848億円となった。支援の継続性を担保するため、6000億円の助成財源を確保するまでは3分の1までしか支援に回せない。そのため616億円が25年度に利用できる金額となる。ここから東北大への拠出と博士人材支援を差し引くと、300億円弱が次の卓越大認定校への支援原資になり、単純計算で東北大より大きな大学なら2校分、小さな大学では3校分に相当する。

赤字で関係者を心配させた大学ファンドが軌道に乗ろうとしている。

日刊工業新聞 2024年07月08日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
計算上はリーマンショック並みの金融危機が来ても1兆円の損失に収まるようリスク管理をしているそうです。今回9934億円分資産を増やせたため、今後は安心して運用出来ることになります。収益率10%と聞いて目標の3倍だと喜び、GPIFの22%を聞いて半分かとなんとも言えない気持ちになった方は少なくないはずです。大学ファンドへの期待は高く、文科省に一喜一憂してはいけないと聡さとされながらも、うまくいくならファンドを積み増してもいいのではないかと考える有識者もいるそうです。20兆円ファンドにして懸案の科研費や運営費交付金の底上げに使えるならすばらしい。年金制度のように科学技術もファンドに貢献してもらう。あくまでベースは国が確保してアドオンを捻出する。こんな仕組みはありなのではないか。利益率に目がくらんで考え始めてしまう方は少なくないはずです。

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