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世界初「半導体特化の生成AI基盤」…米アイトマティック、東京エレクトロンと公開

世界初「半導体特化の生成AI基盤」…米アイトマティック、東京エレクトロンと公開

半導体製造プロセスが複雑化・高度化している(TSMCの熊本第1工場)

AITOMATIC(アイトマティック、カリフォルニア州)は、産業に特化した生成人工知能(AI)の基盤モデルを構築し世界でオープンソース活動を展開する。第1弾として東京エレクトロンと共同で、世界初となる半導体分野に特化した基盤モデルの初版を9日に公開する。まずは半導体製造装置メーカーなどと協力してオープンソースの改良を繰り返し、基盤モデルを通じて半導体分野の技術革新に貢献する。

アイトマティックが描くオープンSSAに基づくAIモデルの全体像(一般的なLLMにはない推論や分析、計画する機能も提供する)

アイトマティックが構築したのは、大規模言語モデル(LLM)に代表される生成AIの基盤モデル。半導体分野の基盤モデルは米国で開幕する半導体産業展「セミコン・ウエスト」で公表する。今後、無償で行うオープンソースの活動を日本など世界各国で展開する。

第1弾では東京エレクトロンを筆頭に半導体製造装置メーカーとの連携に軸足を置く。公開する初版は特定の企業に依存しないオープンソースのフレームワーク(枠組み)「オープンSSA」に準拠し、半導体分野の広範な知識やノウハウを学習して構築した。これを土台に、参加企業を広く募ることで、多様なデータを取り込みながら適時バージョンアップする計画。

参加各社は基盤モデルの発展に協力する一方、オープンSSA上で培われた知見やAIモデルを自社用に取り込んで改良したり、独自のソリューションをいち早く開発したりできる。オープンソースを自社の開発サイクルに組み込むことで、技術革新のスピードを飛躍的に早められる。

現在の参加メンバーは、半導体装置では東京エレクトロンのほかに米アクセリス・テクノロジーズ、半導体メーカーでは蘭NXPセミコンダクターズや米マックスリニアなど。日本では東京エレクトロンを起点にエコシステム(協業の生態系)の広がりが注目される。

半導体産業は設計・製造の微細化や3次元(3D)積層などに伴い、製造プロセスが複雑化・高度化し、1社で全てをカバーすることが困難な状況になっている。オープンソースであれば競合他社と緩やかな協業関係を築いたり、業界標準を先導したりすることも可能だ。

アイトマティックはAIモデルの利活用を促進する推論・計画ツールなどを提供するスタートアップ。2020年に創業した。AIの普及を目的に米IBMと米メタが発起人として立ち上げた業界団体「AIアライアンス」の中核メンバーでもある。今回のオープンソースの活動については、その分科会の活動の一つとしても展開している。


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日刊工業新聞 2024年07月08日

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