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日揮・千代田化工・東洋エンジ…エンジ海外案件にリスク管理必須、事業課題解決急ぐ

エンジニアリング大手3社で海外案件のリスク管理の重要性が高まっている。日揮ホールディングス(HD)と千代田化工建設は、海外案件で工事の遅れが発生し、設計や進捗(しんちょく)管理などの課題解決に取り組んでいる。各国規制への対応やパートナー企業などのリスクも多様化する一方で、液化天然ガス(LNG)の需要は堅調に推移。将来的には脱炭素関連プロジェクトの需要の伸長も見込まれる。好調な受注環境を追い風にするため、各社は事業課題の解決を急ぐ。(八家宏太)

エンジニアリング大手3社の2023年度受注残高

日揮HDは海外プロジェクトでの工事の遅れなどへの対応やリスク対応の費用計上により、2024年3月期の営業損益は189億円の赤字となった。事業領域の拡大に対して設計人員の不足などが響いたことで、プロジェクト管理能力や設計能力、遂行力の確保という課題が浮き彫りになった格好だ。

一方で25年3月期の受注高はLNGプラントが好況な環境を背景に、アラブ首長国連邦(UAE)などでのLNG案件を含めて前期比6700億円増の9700億円を見込む。そのため、適正な人員配置や案件の選別などを進めることで将来の収益に結びつける。

千代田化工建設は米テキサス州でのLNGプラント建設案件で、工事を担うパートナー企業の1社が経営破綻したことによる工事の遅延が業績に影響を与えている。

千代田化工は19年の債務超過時に課題になった米国案件も踏まえて工事に直接参加しない選択をしていたものの、あらためて海外プロジェクトのリスク管理の難しさに直面。今後、契約時にリスク管理や責任分担について顧客などと協議して、それらを契約に盛り込むことでリスク低減を図る方針だ。

現状は受注全体に占めるLNGなど既存分野が大きな割合を占めているが、太田光治社長は「新領域にチャレンジすることで、ポートフォリオの多様化に取り組みたい」と強調。25年3月期からの新中期経営計画の施策には新領域の開拓を盛り込む考えだ。

一方、東洋エンジニアリングは24年3月期の当期利益が同6・0倍の98億円と大きく伸びた。業界関係者は「プロジェクト選択などを厳密にしていることが奏功しているのでは」と見る。石油関連や石油化学などに加えて新規領域が伸長している。25年3月期の粗利益に占める新規事業領域は前期比11ポイント増の20%までに伸びる見通しだ。

日刊工業新聞 2024年7月4日

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