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「国際卓越大」年度内認定へ…東北大学総長が示した決意

「国際卓越大」年度内認定へ…東北大学総長が示した決意

体制強化計画1次案の改訂版の内容を説明する東北大の冨永総長(14日、仙台市内)

東北大学は世界最高レベルの研究水準を目指す「国際卓越研究大学」制度の本認定に向けて、体制強化計画1次案の改訂版を文部科学省の有識者会議(アドバイザリーボード)に示し、「認定基準を満たす」との審査結果を得た。これを受けて冨永悌二総長が「大学改革を先導し、『変革の結節点』になっていく。全学で頑張っていきたい」と決意を示した。2024年度中に正式に認定される見通しだ。

改訂版の作成に当たり、「研究」「教育」「国際」「産学共創・財務」「ガバナンス」の5分野について、認定候補になった際のボードからの意見を踏まえて新たな視点を各分野ごとに盛り込んだ。1次案を深掘りし、各項目で計画したKPI(重要業績評価指標)の道筋をより明確化した。

冨永総長は、個別の研究振興ではなく、大学が世界と伍(ご)して成長軌道を描くための「システム改革」に主眼があると強調した。

次回公募への期待/日本全体の研究力向上促す

東北大が対応した当初の留保条件

世界トップレベルの研究力で、外部資金獲得による成長と社会変革を率いる「国際卓越研究大学」。初回の認定候補で留保条件が付いていた東北大学は精査や明確化を進め、文部科学省に置かれた有識者会議(アドバイザリーボード)から「認定・認可の水準にある」との結論を得た。またボードは「次回公募への期待」を発表。対話によって日本全体の研究力向上を促そうとしている。(編集委員・山本佳世子)

国際卓越研究大学制度は政府の大学10兆円ファンドの運用益を使い、認定大学を25年間で支援するものだ。東北大は今後、10月施行の改正法に合わせてガバナンス(統治)強化の「運営方針会議」を設置する。計画に対する内閣府や文科省審議会の意見聴取を経て、文科相が2024年度内に認定・認可。同年度中にファンド運営の科学技術振興機構(JST)から助成金を受け、25年度から計画開始の見込みだ。文科省は2回目の公募を初回認定後の24年度内に行う。

助成金は認定大学の公的資金を除く外部資金収入(5年平均)と同額という仕組みで、初年度は100億円強が用意される。さらに自己財源から大学独自基金に回す額も考慮され、同大は25年度からの積み上げに応じた金額を27年度から受け取れる、などがある。

同大の留保条件の一つは人文・社会科学系を含めた研究力向上だった。これに対し、総合知による価値創造に向けたレジリエンス(復元力)や人工知能(AI)共生の戦略を策定。部局横断の「国際展開力強化パッケージ」で同系課題の国際化を推進するとした。

国際公募など教員人事では、プロボスト(筆頭理事)の下に教員人事・評価担当副学長や同補佐を配置。終身雇用型のテニュア教員の採用・承認での各専門分野研究者によるピアレビューや、学問分野の特性に応じた雇用条件やテニュア基準の明確化を新たに手がける。財務戦略の高度化では、構築済みの二つのデータベースによるエビデンス(科学的根拠)を活用した、具体的な資源配分策がボードに評価された。

またボードは同大審査の意見と次回の期待に多くのページを割いた。同大の参考に加え「道筋は一つではない」(文科省の大学研究力強化室)と伝える狙いで、研究成果としての社会的・経済的価値指標や、分野別の戦略などを求めた。地域中核・特色大学の支援事業や、国公私を越えた大学連携などと合わせ、日本全体の研究力向上に向けた対話を意識している。

日刊工業新聞 2024年06月17日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「初年度100億円」が一人歩きしがちですが、助成金額の算定法こそ、次に続く大学にとって重要なのではないでしょうか。それは、1)認定大学の外部資金収入(政府研究資金など公的資金を除く)の5年間平均(24年度内支給の今回は、23年度までの5年間)と同額 2)自己財源から大学独自基金の原資に回す分(外部資金がいくら多くても、使途が決まった共同研究費や寄付は、基金に回せないので除かれる)に応じた額(計算式が出てくるのでしょう) 3)政府の10兆円ファンドへの拠出に応じた額 -と固まってきました。ちなみに今回の文科省レクで1)2)は説明されましたが、3)は提示されませんでした。後の確認で私は把握したのですが、これはまだ先の話すぎる(認定大学で正のスパイラルが動き出す10数年先あたりから?)ので、項目として挙げられているレベル(詳細は決まっていない)と考えてよさそうです。

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