「感じない」逆手に…小型振動子で額に触覚刺激、電通大がVRの体験価値向上
電気通信大学の秋葉優馬大学院生と梶本裕之教授らは、小型振動子でおでこに触覚刺激を提示する手法を開発した。小さな直動共振型アクチュエーター(LRA)を利用するため触覚提示アレイを構成できる。ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)に搭載すれば額や顔を触られた感覚を提示できるようになる。VR(仮想現実)の体験価値を向上させる。
200ヘルツで振動するLRAで額を刺激する。おでこには200ヘルツの振動を知覚するパチニ小体が存在しない。そこで200ヘルツの振動の振幅を変えて2―32ヘルツの波(包絡波)を作る。2―16ヘルツの包絡波を提示すると2ヘルツではグッグッと押されているように感じ、16ヘルツではトントンとたたかれるように感じる。
LRAは小さく、アレイ状に数を並べて触覚ディスプレーを作りやすい。だがLRAの200ヘルツの振動はビーッというノイズを感じ触覚提示に向かなかった。
おでこでは受容体がなく、ノイズを感じないため触覚提示に利用できる。HMDの顔との接触部分に搭載すれば、VR空間で顔に風を提示したり、相手とおでこを合わせたりするような表現が可能になる。
実験では指先と腕、額に刺激を提示して周波数を知覚できるか検証した。2―32ヘルツの包絡波を利き手でない手にも提示して知覚周波数が合っているか答える。額は2―16ヘルツでは指腹と同等に周波数を知覚できた。触覚刺激は視覚や聴覚の刺激に強く影響を受けるため、どのようなVRコンテンツに有効か検証していく。
日刊工業新聞 2024年6月6日