住友化学が4事業部門に再編、成長ドライバーは?
住友化学が中長期的な成長に向け、新たな事業体制を構築する。10月から農業と情報通信技術(ICT)分野を成長ドライバーとするなどした4事業部門に組織を再編し、各事業領域の位置付けを明確にする。2025年3月期を想定する業績のV字回復に道筋を付けつつ、次世代に向けた成長モデルの確立を目指す。(山岸渉)
「当社にはグリーン、デジタル、バイオを切り口とした重要なアセット(経営資源)がある。革新的なソリューションを生み出し、存在感のある企業であり続けたい」。岩田圭一社長はこう意気込む。
住友化学は農薬など農業分野の「アグロ&ライフソリューション」と、半導体材料などICT分野の「ICTソリューション」を成長領域と位置付ける。また、基盤領域として石油化学などの環境負荷低減に取り組む「エッセンシャル&グリーンマテリアルズ」と、新規領域の開発製造受託(CDMO)など先端医療関連の「アドバンストメディカルソリューション」を置く。
成長領域2分野は農薬や半導体関連材料の強みなどを発揮し、24年3月期業績予想でもコア営業利益を確保。今後も高成長を見込んでいる。両分野には6年間で計4000億―5000億円を投資する計画。31年3月期までに、それぞれコア営業利益1000億円を目指す。
農業分野では長年培ってきた化学農薬と、バイオラショナルなどの天然物の技術などを生かす方針だ。またICT分野では半導体用ケミカル(精密洗浄に用いる化学品)に加え、フォトレジストなど先端半導体材料がけん引役となる。半導体用ケミカルの米国進出によって事業地域を拡大し、もう一段の成長につなげる構えだ。
一方、基盤領域とするエッセンシャル&グリーンマテリアルズは環境負荷低減に注力する。ケミカルリサイクル技術の開発やバイオ原料化などに取り組みつつ、新たな収益基盤として期待するのがライセンス事業だ。
最近では、米KBRとプロピレンオキサイド(PO)製造技術のライセンス供与で協業。KBRのマーケティング力やエンジニアリング力を活用し、住友化学が持つ環境負荷の低いPO製造技術をより多くの顧客に提案してもらう。こうした取り組みを拡大していく考えだ。
また、アドバンストメディカルソリューションではiPS細胞の技術を生かした再生・細胞医薬品に取り組む。低分子から中分子領域を対象としたCDMOに力を入れる。
住友化学は事業の再構築などで、25年3月期にはコア営業利益や当期利益が黒字化する見通しを示している。併せて経営資源の投入にメリハリをつけるなど事業戦略を明確化し、新たな成長につなげていく。
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