23年度業績予想は2450億円赤字の住友化学、業績改善へ株売却でキャッシュ創出
住友化学が抜本的な構造改革に向け、短期での集中的な業績改善策を積み重ねている。2024年度の業績V字回復を視野に、米国子会社の売却や政策保有株式の売却といった事業や財務体制の整備を実施。子会社の住友ファーマも事業の再構築を進めており、住友化学が今後公表予定の抜本的な構造改革の実行に弾みを付ける。(山岸渉)
住友化学は農作物の収穫後に使われる殺菌剤や鮮度保持剤、コーティング剤などのポストハーベスト事業を手がける米子会社ペース・インターナショナル(ワシントン州)を、米アグロフレッシュ・ソリューションズ(ペンシルベニア州)に売却した。
これに伴い、住友化学はアグロフレッシュとポストハーベスト分野で戦略提携を推進。生物由来農薬などの「バイオラショナル」を含め、連携していく考えを打ち出す。
また、石油精製などを手がける富士石油の株式6・46%分を出光興産に売却するなど、政策保有株式の売却も進めている。
住友化学は23年度業績予想で、当期損益が2450億円の赤字となる見通し。これを受け、短期の業績改善策として24年度末までに事業の再構築や政策保有株式の売却などで、約5000億円のキャッシュ創出を目指している。
すでに、キャッシュで3500億円以上の達成は確実と見ている。岩田圭一社長は2月の決算会見で「できるだけ膿を出し、24年度のV字回復につなげたい」と先を見据える。
一方、住友ファーマも米子会社の従業員約400人を削減するなど、もう一段の合理化に取り組んでいる。抗精神病薬「ラツーダ」の米国での特許切れや、前立腺がん治療薬など基幹3製品の販売が想定を下回るなど収益は厳しい。保有する英ロイバント・サイエンシズ株式の売却も決め、政策保有株式の見直しによって資産効率の向上を図る。
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日刊工業新聞 2024年4月4日