住友金属鉱山が6年ぶり交代、「技術畑」新社長の素顔
住友金属鉱山は松本伸弘取締役専務執行役員(61)が社長に昇格する人事を内定した。野崎明社長(63)は代表権のある会長に就任する。社長交代は6年ぶり。6月下旬開催予定の株主総会後の取締役会で正式に決める。海外での銅鉱山開発などの大型プロジェクトの完成にめどをつけたことを踏まえ、2025年度から始まる次期中期経営計画について新たな経営体制で策定に取り組み、さらなる企業価値の向上を目指す。
「めまぐるしく事業環境が変化する中で、自らをコントロールして、やるべきことを基本を見極めて実現したい」。松本氏は社長就任への意気込みをこう語った。金属事業本部長や金属事業本部ニッケル工場長などを歴任し、モノづくり現場での経験が長い。松本氏は「モノづくり力の強化にこだわりたい。生産量や品質、コストの計画達成だけでなく、原料調達やリサイクルなどサプライチェーン(供給網)全体で構築を図る」とした。
住友金属鉱山はケブラダ・ブランカ銅鉱山開発プロジェクト(チリ)や電池材料の新工場など、大型投資案件の完成にめどをつけた。松本氏は「この大型プロジェクトをいかに収益につなげるかだ」と語り、一段の企業価値向上に向けて次期中計の策定を進める。
【略歴】松本伸弘氏 87年(昭62)九州工大院工学研究科修士修了、同年住友金属鉱山入社。16年執行役員、19年取締役執行役員、22年取締役専務執行役員。福岡県出身。
素顔/住友金属鉱山社長に就任する松本伸弘(まつもと・のぶひろ)氏
11年ぶりの技術畑の社長。21年間工場で勤務し、工場長も経験した。周りの人を巻き込む力に定評がある。自身について「周囲の意見を聞きながら、全体の雰囲気を盛り上げるように心がけている。現場を担当していると自分だけでは回らない」と分析する。
一方で「気が短いので、表に出さないようにしたい」と苦笑い。野崎明社長は松本次期社長の人柄に関して「明確な答えがない課題に対しても、プラス思考で何らかの答えを出してくる」と粘り強さを評価する。
2006―07年にはフィリピンのパラワン島にある工場でニッケルの大規模プラントの本格的な立ち上げに携わった。当初は生産量が上がらず苦戦したものの、工場の従業員全員で対応。07年末には年間1万トンの生産を達成し、仲間とともに祝った。
週末は1時間程度ジョギングし、その後はゆっくり過ごす。家族は妻と子ども3人。(岡紗由美)