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青海波構造の熱流、温度で方向逆転…東大が実証

青海波構造の熱流、温度で方向逆転…東大が実証

シリコン薄膜に作製した青海波構造(東大提供)

東京大学のキム・ビョンギ特任助教と野村政宏教授らは、微小な青海波(せいがいは)構造で熱の伝わる方向が温度で切り替わることを実証した。室温では青海波の波に平行な方向に熱が伝わりやすいが、低温では波に垂直な方向に熱が伝わりやすくなる。熱を特定の方向に流して熱に弱い部分を守るなど高度な熱制御に提案していく。

青海波は和装柄の一つで扇形の繰り返し構造を持つ。半導体微細加工技術でシリコン薄膜に青海波構造を作り、熱が流れる方向を測定した。すると80ケルビン(マイナス193度C)を境に流れやすい方向が切り替わった。

室温では熱が波に平行な方向に伝わりやすく、垂直方向は伝わりにくい。小さな扇型のアーチが行き止まりのように働く。80ケルビン以下の低温では熱の粒子としての性質が強くなり、まっすぐ進むように振る舞う。すると扇形のアーチで曲げられ逆流する効果が大きくなる。結果として垂直方向の方が流れやすくなる。

実験では水平・垂直方向の異方性を約0・8から1・2へ変化させられた。1が等方性に当たり、異方性は逆転した。微小構造で熱流を制御できると材質の効果と重ね合わせられる。

日刊工業新聞 2024年04月08日

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