強者・GE、ガスタービンで日本の電力基盤に攻め込む
三菱日立パワーシステムズは“本土防衛”に力を注ぐ。そして東芝は?
来月から日本でもいよいよスタートする電力小売りの全面自由化。再生可能エネルギーや環境対応、それらを踏まえた上でのエネルギー・ミックスなど、これから電力基盤の様相はさらに変化の勢いを増しそう。
新しい電力プレイヤーの話題が目立つが、伝統ある発電事業者も革新へと乗り出している。より安価な電力を求める声が高まるなか、発電コストを下げるためのキーワードは「効率化」。ここでは、発電コストの大幅削減につながる米ゼネラル・エレクトリック(GE)のガスタービン技術を日米の事例を取り上げる。
昨年末、米ペンシルベニア州ルザーン郡セイラム・タウンシップに建設される新しい発電所、ケースネス・モキシー・フリーダム発電所に、GE製ガスタービン2基と制御システム、関連機器と長期サービスを提供することが決定した。
同発電所は世界最大の生産量を誇るマーセラス・フォーメーションの天然ガスを使う計画で、2018年の完成後には米国の一般家庭約100万戸分相当の電力(1,029メガワット)を供給する予定。
ちなみに、ここで導入されるHAというGE製大型ガスタービンには、工場の従業員たちが名づけた「ハリエット」というニックネームがついている。
そんな「ハリエット(HA)」には2つのタイプがある。「7HA」は米国や一部のアジア諸国など60Hz交流を利用する地域用、「9HA」は50Hzの地域のためのものだ。
前述の発電所は、コンバインド・サイクル設計(内燃力発電の排熱を使って汽力発電を行う設計)を採用したことで、従来の単純サイクル型発電所で同量の燃料を使う場合と比較して最大1.5倍もの発電能力を手に入れる予定。
ここでは、まず2基のガスタービンが天然ガスを燃焼させてエネルギーを作り、そのエネルギーで発電機を回す。次に排熱回収ボイラー(HRSG)が、通常であれば排気管から逃げていってしまう排熱を回収して作る蒸気を使って発電する。
GEグリーンビル工場で実施したテストでは、タービンに3,000個以上のセンサーを取り付けて動作の信頼性と効率を検証した。結果は、コンバインド・サイクル発電効率61%以上という成績。これは、発電コストの大幅削減が可能になることを意味する。
またこのシステムは発電量ゼロの状態からわずか30分で最大出力値に達することができ、1日のなかでも大きく変動する電力需要に柔軟に対応できるだけでなく、とくに風力や太陽光など自然条件の影響を受けやすい発電方式との補完的な起動も可能だ。
この「コンバインド・サイクル」方式が、日本でも中部電力の西名古屋火力発電所でリフレッシュ工事計画が進められており、7HAとしては世界初として2017年9月から運転を開始予定。この西名古屋火力発電所においては、世界トップクラスとなる熱効率62%(定位発熱量)を目指し、コスト削減と環境負荷の低下を両立させようとしている。
世界の発電所建設計画でこれまでに技術選定を通過しGEが受注を受けた78基のうち23基がHAガスタービンとなった。そんな「ハリエット(HA)」には、GEのさまざまな事業部門の知見や研究成果が詰め込まれている。
例えば、効率向上に有効な単結晶合金製の脱着式エアロダイナミック・ブレードや高熱に耐える遮熱コーティングなど、GEの研究者たちが超音速ジェット・エンジンなどの先端テクノロジー開発で培ってきた設計技術や材料も多数使われている。
また、昨年、仏アルストムの発電・送配電事業のM&Aが成立したことで、GEのガスタービンとアルストムの蒸気タービンを組み合わせたパッケージ販売が可能になった。
これが、顧客企業のさらなるコスト削減につながるという。すでに、ニュージャージー州セウェアンにあるPSEGのコンバインド・サイクル発電所では、7HA.02ガスタービンとアルストム製の排熱回収ボイラー(HRSG)が使われている。
パキスタンでは、ビーキー発電所に9HA.01ガスタービン2基とアルストム蒸気タービン1基が設置される予定。テキサス州では、イクセロンのコロラド・ベンド発電所とウルフ・ホロー発電所にそれぞれ7HA.02ガスタービン2基とアルストム蒸気タービン2基が設置されることも決まっている。
<次のページは、三菱日立パワーシステムズの旗印は「世界一」>
新しい電力プレイヤーの話題が目立つが、伝統ある発電事業者も革新へと乗り出している。より安価な電力を求める声が高まるなか、発電コストを下げるためのキーワードは「効率化」。ここでは、発電コストの大幅削減につながる米ゼネラル・エレクトリック(GE)のガスタービン技術を日米の事例を取り上げる。
昨年末、米ペンシルベニア州ルザーン郡セイラム・タウンシップに建設される新しい発電所、ケースネス・モキシー・フリーダム発電所に、GE製ガスタービン2基と制御システム、関連機器と長期サービスを提供することが決定した。
同発電所は世界最大の生産量を誇るマーセラス・フォーメーションの天然ガスを使う計画で、2018年の完成後には米国の一般家庭約100万戸分相当の電力(1,029メガワット)を供給する予定。
ちなみに、ここで導入されるHAというGE製大型ガスタービンには、工場の従業員たちが名づけた「ハリエット」というニックネームがついている。
そんな「ハリエット(HA)」には2つのタイプがある。「7HA」は米国や一部のアジア諸国など60Hz交流を利用する地域用、「9HA」は50Hzの地域のためのものだ。
前述の発電所は、コンバインド・サイクル設計(内燃力発電の排熱を使って汽力発電を行う設計)を採用したことで、従来の単純サイクル型発電所で同量の燃料を使う場合と比較して最大1.5倍もの発電能力を手に入れる予定。
タービンに3,000個以上のセンサーでコスト下げる
ここでは、まず2基のガスタービンが天然ガスを燃焼させてエネルギーを作り、そのエネルギーで発電機を回す。次に排熱回収ボイラー(HRSG)が、通常であれば排気管から逃げていってしまう排熱を回収して作る蒸気を使って発電する。
GEグリーンビル工場で実施したテストでは、タービンに3,000個以上のセンサーを取り付けて動作の信頼性と効率を検証した。結果は、コンバインド・サイクル発電効率61%以上という成績。これは、発電コストの大幅削減が可能になることを意味する。
またこのシステムは発電量ゼロの状態からわずか30分で最大出力値に達することができ、1日のなかでも大きく変動する電力需要に柔軟に対応できるだけでなく、とくに風力や太陽光など自然条件の影響を受けやすい発電方式との補完的な起動も可能だ。
西名古屋火力発電所、世界トップの熱効率に
この「コンバインド・サイクル」方式が、日本でも中部電力の西名古屋火力発電所でリフレッシュ工事計画が進められており、7HAとしては世界初として2017年9月から運転を開始予定。この西名古屋火力発電所においては、世界トップクラスとなる熱効率62%(定位発熱量)を目指し、コスト削減と環境負荷の低下を両立させようとしている。
世界の発電所建設計画でこれまでに技術選定を通過しGEが受注を受けた78基のうち23基がHAガスタービンとなった。そんな「ハリエット(HA)」には、GEのさまざまな事業部門の知見や研究成果が詰め込まれている。
例えば、効率向上に有効な単結晶合金製の脱着式エアロダイナミック・ブレードや高熱に耐える遮熱コーティングなど、GEの研究者たちが超音速ジェット・エンジンなどの先端テクノロジー開発で培ってきた設計技術や材料も多数使われている。
アルストム買収で蒸気タービンと組み合わせ進む
また、昨年、仏アルストムの発電・送配電事業のM&Aが成立したことで、GEのガスタービンとアルストムの蒸気タービンを組み合わせたパッケージ販売が可能になった。
これが、顧客企業のさらなるコスト削減につながるという。すでに、ニュージャージー州セウェアンにあるPSEGのコンバインド・サイクル発電所では、7HA.02ガスタービンとアルストム製の排熱回収ボイラー(HRSG)が使われている。
パキスタンでは、ビーキー発電所に9HA.01ガスタービン2基とアルストム蒸気タービン1基が設置される予定。テキサス州では、イクセロンのコロラド・ベンド発電所とウルフ・ホロー発電所にそれぞれ7HA.02ガスタービン2基とアルストム蒸気タービン2基が設置されることも決まっている。
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