無人ヘリコプターで森林守る。ヤマハ発動機が始めた新事業の全容
ヤマハ発動機は産業用無人ヘリコプターに高性能センサー(LiDAR)を搭載して森林状態を計測するサービスに、「RINTO(リント)」というブランドを立ち上げ、本格的な事業活動を始めた。国内では山林の荒廃が社会問題化している。その中で、ヘリでできる「ヤマハ発動機らしい社会貢献とは何か」(加藤薫森林計測部長)というテーマのもとに生まれた新しい事業を追った。(浜松支局長・本荘昌宏)
2019年に森林経営管理法が施行されたことにより、森林所有者は手入れの行き届いていない森林の経営管理を市町村に委託できるようになった。木材活用ができる森林の場合は、市町村から専門事業者に管理を再委託する場合もある。
ただ問題は管理主体が自治体でも事業者でも、まずは「山が今、どういう状態なのかを正しく知る必要がある」(加藤部長)ということだ。
ヤマハ発動機が新たに立ち上げたリントは、同社製ヘリが長時間低空で自動航行し、木や地面にさまざまな角度から斜めにレーザーを照射することで膨大な点群データを取得。それを基に、木の幹の直径や地表面の状態まで3次元(3D)で描写できる。
こうした計測は毎秒10メートル程度の風速にも耐え、約100分間飛び続けるリント専用の仕様に仕立てたヘリの性能が可能にしている。広範囲に取得した森林のデータはクラウドサービス上に置き、専用ソフトウエアからパソコンやスマートフォンなどで確認できる。
森林の調査方法は人手による作業が最も実績のある手段だが、数人がかりで調査可能な範囲は1日当たり1ヘクタール程度という。リントであれば1日で最大100ヘクタールほどのデータを取得できる。既に自治体や企業からの受託実績がある。
ヤマハ発の産業用ヘリの歴史は30年以上と長く、主に農薬散布などに用いられている。防災分野での活用も多く、1月に発生した能登半島地震でも物資搬送に使われた。
現状、リントは24年12月期を最終年度とする3カ年中期経営計画で推進中の「新規事業」の一環として、自社で運営している。今後軌道に乗った段階で、営業面でヤマハ発製ヘリの取扱店である各地の「スカイテック」との連携も視野に入れ、事業拡大を目指す。