アップルのクラウドサービス、「アマゾン・MS・グーグル」依存から抜け出せるか
自前DCの建設急ぎ、かたやスパイ対策でサーバー開発も検討
AWSの割合減らしグーグルとも契約
さらに、この2社に加え、アップルは2015年後半にグーグルのグーグルクラウドプラットフォームとも契約していたことが、CRNの3月16日の報道で明らかになった。
企業や組織の不特定多数のユーザー向けに提供する「パブリッククラウド」の分野で、グーグルは首位のAWS、2位のアジュールを追い上げる立場にある。モルガン・スタンレーのレポートによれば、2015年の売上高がAWSの79億ドル、アジュールの11億ドルに対し、グーグルクラウドは5億ドルにすぎない。
同レポートによれば、アップルはAWSの利用料として年間約10億ドルを支払い、その軽減を目的に自前のDCの建設に動いているとみられるという。また、CRNによれば、アップルは4億ドルから6億ドルをグーグルクラウドプラットフォームに支払っているとグーグル幹部が明らかにした。
結局自社だけでは難しい!?
これが年間利用料かどうかは明らかでないものの、AWSへの依存度を減らしつつ、プロバイダー同士を競合させて料金も下げたいアップルと、価格の安さを武器にクラウドサービスの事業拡大を目論むグーグルの思惑が一致した格好だ。
かたやグーグルのクラウドサービスの顧客はそれまでスタートアップや中小企業が多かったが、アップルに続く形で、2月には音楽配信サービス大手のスポティファイ(Spotify)がグーグルクラウドの導入を発表している。
WSJ「グーグル・クラウド、有名企業の顧客増やす アマゾンとマイクロソフトの追い上げ図る」
先のVenture Beatによれば、アップルがAWSへの依存度を減らした大きな理由は、価格面だけではないという。写真やビデオをiCloudからiOSデバイスに取り込むのに、AWSサーバーだと時間がかかることにアップルが不満を募らせているのも理由だとしている。
IT大手のフェイスブックやグーグルは自社でサーバーやDCの設計まで行う。フェイスブック主導によるDC設備の設計共有化プロジェクトである「オープンコンピュートプロジェクト(OCP)」には3月になってグーグルも参加を表明した。すでにアップルやMSもOCPに加盟している。
ただ、アップルのこうした動きについてThe Informationは手厳しい。自前のサーバーやDC関連ハードウェアおよびソフトウェアへの取り組みに対し、他のIT大手よりペースが遅いとしながら、iPhoneだけで数億人という巨大なユーザーベースの存在がiCloudをはじめとするクラウドサービスの需要増加に拍車をかけ、自社だけでの対応を難しくしていると指摘する。
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