石川・福井に新幹線効果、ライドシェア・バスツアーで一大チャンスつかめるか
北陸新幹線の福井・敦賀までの延伸開業を受け、沿線では2次交通の強化が進む。石川県加賀市では住民ドライバーが乗客を送迎する「ライドシェア」が始まったほか、福井県ではバス5社が連携して観光バスツアーの運行を開始。県がタクシーやバスの利便性向上や、人材確保の支援にも乗り出した。人手不足が深刻化する中、新幹線開業の一大チャンスをつかむための正念場だ。(梶原洵子)
「新幹線の開業は100年に一度のチャンス。だが、駅からの交通手段がなければ、観光にとって大変なマイナスイメージになる」。石川県加賀市の西元陸市長は、期待と同時に強い危機感を語る。同市の加賀温泉では夜にタクシーが1時間待ちになることもあった。そこで始めたのが、住民が交通の担い手になるライドシェアだ。
世界でライドシェアビジネスをリードするウーバー・ジャパン(東京都港区)と組み、地元タクシー会社による運行管理や運転手教育の下、12日から本格運行を開始した。70人以上から住民ドライバーの応募があったといい、出だしは上々だ。
福井県は県内に主要観光地が点在し、駅からも離れているため、観光客の取り込みにはバスやタクシーなどの2次交通が欠かせない。貸し切りバス事業者5社と県のバス協会はコンソーシアム(共同事業体)を組み、駅を基点とした観光バスツアー「はぴバス」を開始した。コンソーシアムを組織してバスツアーを催行するのは全国初の取り組みだ。
バスやタクシーでは都会からの旅行者が普段使い慣れたツールを導入し、利便性を高める。福井鉄道(福井県越前市)と京福バス(福井市)は、2月24日から路線バスに交通系ICカードを導入した。配車アプリケーション「GO」の利用も、福井県内の大半のタクシーで可能となった。福井県は国とも連携して両取り組みの機材導入費を全額補助し、後押しした。
また、福井県内のタクシー運転手は慢性的に不足している。新幹線開業に合わせて増員するため、県は奨励金も用意した。
新しいカーシェア拠点も増えてきた。ENEOSは3月に福井県あわら市で電気自動車(EV)のカーシェアを開始。福井ダイハツ販売(福井市)はえちぜん鉄道の勝山駅やJR鯖江駅などの複数カ所にカーシェア拠点を設置した。
新幹線が開業しても、駅からの交通手段がなければ、観光客は幻滅し、リピーターにはなってくれない。沿線の交通も大きく変わろうとしている。