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三菱商事・住商…燃料アンモニアのサプライチェーン、構築競争が活発化

三菱商事・住商…燃料アンモニアのサプライチェーン、構築競争が活発化

三菱商事は愛媛県今治市のLPGターミナルのアンモニア供給拠点化を目指す(波方ターミナル提供)

大手商社で燃料アンモニアのサプライチェーン(供給網)の構築に向けた動きが広がっている。三菱商事は米国でのアンモニア製造事業で出光興産と連携し、同社の国内輸入基地への供給を目指す。住友商事IHIなどと共同で台湾の火力発電所でのアンモニア混焼に取り組む。既存インフラと産業ネットワークを有効活用しながら、燃焼しても二酸化炭素(CO2)が発生しないアンモニアの供給網の構築競争が活発化する。

三菱商事は米ルイジアナ州で、スイスのメタノール大手プロマンと共同で2030年度までに年間120万トンの低炭素アンモニアの生産開始を目指す事業を計画する。このほど出光興産が同事業への参画で合意し、同社の徳山事業所(山口県周南市)の既存設備を活用して設置する輸入基地でアンモニアを受け入れ、周辺のコンビナートなどに供給する。

三菱商事はすでに四国電力などと共同で、愛媛県今治市の液化石油ガス(LPG)ターミナルを一部アンモニア用に転換するプロジェクトに着手している。四国・中国地方の工業地帯向けを中心とした供給拠点の整備を進める。

三井物産三井化学、IHI、関西電力の4社は水素・アンモニアの供給網構築に向けた検討で連携する。4社は「関西・瀬戸内地域での利活用先の拡大に向けた調査などに取り組む」とし、電力事業も手がける神戸製鋼所とはすでにアンモニア利用に向けた協議を開始している。

住友商事はIHIや台湾の電力会社の台湾電力公司と共同で、30年末までに現地の石炭火力発電所でアンモニア混焼5%以上の実証実験を目指す。住友商事がアンモニア混焼の実証に参画するのは初めてで、「他の既存石炭火力への展開も検討していく」(同社)とする。

肥料に長く使われてきたアンモニアは海上輸送でも既存インフラを有効活用できるため、現実的な脱炭素手段として国際的に注目される。上流から下流までをつなぐ商社のネットワークを生かした供給網整備の加速が、開発競争のカギとなりそうだ。

日刊工業新聞 2024年03月13日

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