がん新薬照準、住友ファーマが26年に日米で市場投入めざす
急性白血病向けなど早期投入
住友ファーマはがん領域の医薬品開発を加速する。欧州で急性白血病治療用のメニンたんぱく質・MLLたんぱく質結合阻害剤「DSP―5336」の治験を行う地域を広げているのに加え、2026年度に日米で急性骨髄性白血病での承認取得と市場投入を目指す。27年度に市場投入を目指す骨髄線維症治療用経口PIM1キナーゼ阻害剤「TP―3654」も、カナダで治験を実施する地域を広げている。ともに「承認を目指せるものとして開発活動を進める」(野村博社長)と強調する。(大阪・市川哲寛)
DSP―5336はたんぱく質間の相互作用に起因する白血病関連遺伝子の発現を抑制し、正常血液細胞への分化促進による抗腫瘍作用が見込める。急性骨髄性白血病では5年生存率30%以下や骨髄移植なしでの根治が難しいケースがあり、新規治療法の開発が求められている。
DSP―5336は22年に、急性骨髄性白血病への適応で米食品医薬品局(FDA)から希少疾病用医薬品であるオーファンドラッグの指定を受けている。日本と米国、カナダ、韓国、台湾、シンガポールで単剤での試験を進めており、24年度上期にフェーズ2試験を始める予定。さらには欧州連合(EU)当局の治験実施許可を受け、EU圏内での治験を増やしている。治療選択肢が限られるため、対照薬を置かない単群フェーズ2での承認を目指す。
TP―3654は非臨床試験で脾(ひ)腫や骨髄線維化、生存期間の改善が確認され、血小板減少など血液毒性の懸念が小さいことが示された。22年に骨髄線維症への適応でFDAからオーファンドラッグの指定を受けた。日本と米国、豪州、英国、イタリアで単剤でのフェーズ1、2試験を行っている。カナダでも大都市圏中心に治験を広げているという。
骨髄線維症は希少造血腫瘍の一種。標準治療として関節リウマチなどの治療薬であるJAK阻害剤が位置付けられているが、貧血や血小板減少を引き起こして投与中止になる場合があるという。このため血液学的有害事象が少なく、脾腫や全身症状を改善できる新規治療法の開発が望まれている。 今後はJAK阻害剤との併用試験を検討し、27年度内に骨髄線維症を対象とした検証的試験結果の取得を目指す。
住友ファーマはがん領域において、21年に北米で医薬品の販売を開始し、同社の基幹3製品の一つに位置付ける前立腺がん向け「オルゴビクス」に続く製品の早期投入を目指している。DSP―5336などは「自社開発で10数年手がけてきた。成果になると期待している」(同)。
同社は急性白血病や骨髄線維症のほかにも膠芽腫(こうがしゅ)や固形がん向けで臨床試験を進めている。自社開発の医薬品の事業展開、ノウハウ蓄積が中長期的な成長にもつながるため重視する考えだ。