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宇宙機エンジン燃費改善へ、JAXAなどが液体燃料の挙動を簡単予測

宇宙機エンジン燃費改善へ、JAXAなどが液体燃料の挙動を簡単予測

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)とアドバンスソフト(東京都千代田区、松原聖社長)は、液体燃料の挙動を簡単に予測する技術を開発した。さまざまな形状や大きさの推進薬タンクに対応し、極低温流体の相変化も予測できる。数年以内にソフトウエアを完成し、価格は約100万円からを見込む。宇宙機のエンジンの燃費改善につながる。ロケット開発を進める企業だけでなく、次世代エネルギーとして注目されている液体水素を扱う企業にも販売したい考えだ。

開発するシミュレーション技術では設計したい推進薬タンクのパラメーターが少なくても、JAXAが検証済みの格子データベースを基に解像度の要素となる計算格子を自動生成できる。タンクの格子計算は熟練の技術者でも1日かかる作業だが、同技術を用いることで初心者でも数分で結果を出せる。

同手法で設計するとタンクの推進薬の詳細な動きが分かるだけでなく、極低温状態での相変化を再現できる。詳細なシミュレーションはロケットの燃費改善に必要な技術であり、新しくエンジンを開発しなくても従来のエンジンを改良することで遠くの軌道にも人工衛星を投入できるようになる。JAXAでは次世代機となる再使用ロケットの開発で活用するという。

日本では東京大学とJAXAが共同で開発したツールが使われている。だが流体解析の初心者には扱いにくく、熟練の技術者でも作業に時間がかかっていた。開発したシミュレーションは従来の手法を改良し、計算格子を自動生成することで使いやすくした。

ロケットが打ち上がった後の低重力環境での推進薬の動きは地上では試験できず、シミュレーションの利用が必須で他国も開発を進めている。特に極低温状態を再現することは難しく、各国が独自で開発を進めているのが現状だ。

日刊工業新聞 2024年03月05日

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