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焦点は日本語版…生成AIの基盤「LLM」商戦が迎えた新局面

焦点は日本語版…生成AIの基盤「LLM」商戦が迎えた新局面

生成AIには透明性の確保などの課題がある(米オープンAIの「チャットGPT」)

学習データの出所など公開 “責任あるAI”担保

生成人工知能(AI)の基盤となる大規模言語モデル(LLM)をめぐる商戦が新局面を迎えている。焦点は日本語版LLM。米オープンAIや米グーグルなどがグローバルで提供する多言語対応のLLMに対し、日本語版LLMは日本語固有の文脈にも対応し、軽量で扱いやすいことが特徴だ。日本IBMは独自のLLM「Granite(グラナイト)モデル」の品ぞろえとして、「グラナイト日本語版モデル」を29日(米国時間)に発売すると27日発表した。(編集委員・斉藤実)

日本語版LLMをめぐっては、大手ITベンダーではNECが軽量版の開発・商品化で先駆け、富士通スーパーコンピューター「富岳」の活用や軽量版の社内検証を進めている。外資系では日本IBMが日本語版LLMの商品化で一番乗りとなる格好で、企業向けAIプラットフォーム(基盤)「ワトソンx」を通じて発売する。

価格はSaaS(サービスとしてのソフトウエア)利用の場合、従量課金制。オンプレミス(自社保有)利用はサーバーの規模などによってライセンス(使用許諾権)料が異なる。

今回の日本語版モデルは「グローバルで発売済みの英語版モデルのデータに加え、新たに日本語データを学習させ、日本語性能を高めた」(倉田岳人日本IBM東京基礎研究所技術理事)。パラメーター数は80億。オープンAIが提供する「チャットGPT」のLLMなどと比べて20分の1程度と、軽量でありながら高い精度を実現した。長い日本語の文章を効率的に処理し、高速に推論できる。

日本IBMの竹田理事は生成AIビジネスを全方位で支援する方針を強調した(27日)

学習に用いたデータの出所や学習法は技術仕様書として日本語で公開することで、生成AIで課題となる透明性を確保し、“責任あるAI”の担保を図った。

また、ワトソンxではオープンソースの日本語版LLMなども提供することで、顧客がユースケース(活用例)に応じて最適なモデルを選択できるようにしている。

日本IBMのワトソンx事業を統括する竹田千恵理事は27日の発表会で「今後3年間で生成AIがもたらす影響として、全産業のデジタル変革(DX)で500兆円に上る経済効果がある」と指摘。これに向けて「(今回のグラナイト日本語版モデルの提供も含め)ワトソンx事業ではワークショップ(参加型講習会)や概念実証(PoC)などで構成する『共創プログラム』を無償で提供し、専門チームがサポートする」と生成AIビジネスを全方位で支援する方針を強調した。

日刊工業新聞 2024年02月28日

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