DXで進化を遂げる金属加工のプロ集団 ―生産管理システムの内製で生産性向上
記者の目/ここに注目
□設計から組立、ソフト開発まで一貫体制を構築
□SE部門の強化を推進、人材確保にも注力
機械加工部品や各種省力機械の製造を主力とする中村機械。設計から開発、部品加工、組立、電装、ソフトウエア開発までの一貫体制を武器に、およそ半世紀の歴史を紡いできた。村田製作所をはじめとする大手電子部品メーカーを主要顧客とし、足元では医薬品メーカー向けなど受注のすそ野を着実に広げている。目下の重点戦略は自動化・省人化と、これを実現するためのデジタル変革(DX)の推進。「ベテランの技能と若手の柔軟な発想を組み合わせ、相乗効果を生み出したい」と中村友輝専務は力を込める。
データの有効活用を推進
中村機械は産業機械などの部品加工メーカーとして1969年に創業。以来、顧客のニーズをくみ取りながら、省力機械の製造やソフトウエア開発など事業の多角化を進めてきた。部品加工部門では工作機械に自動でワーク(加工対象物)を投入する多面パレットによる自動化や、コンピューター利用製造(CAM)で加工条件の共通化を推進。CAMによってベテランの技術をデータ化することで「入社1年目の新人でも同じ加工をできるようにした」(中村専務)。技術のデータ化は珍しくないが、アルミニウム、鉄、真ちゅう、銅など多様な素材の加工データを保有するのが強みだ。
こうした生産管理システムを内製しているのも特徴。2017年にシステムエンジニア(SE)の専門部署を設置し、システムの自社開発に乗り出した。中村専務はシステムを内製する狙いについて「外注では修正の必要が出たときに時間やコストがかかるが、社内で完結できれば細かな微調整や作り直しが低コストで迅速にできる」と強調。SE部門は現在3人体制だが、将来はシステムの外販も視野に入れつつ、正社員の10%程度まで増やす方針だ。
DXについて中村専務は「若い人の発想を大切にしたい」と強調する。若手人材は幼少の頃からデジタル技術に触れており、何の抵抗もなくデジタル化に対応してくれているという。製造部門のペーパーレス化が成功したのも「若手のおかげ」(中村専務)と感謝する。今後はベテランのスキルももちろん必要だが、若手の柔軟な発想が企業成長に欠かせない。熟練の技術と若手の発想を融合させ、一層の成長軌道を描く考えだ。
鉄工所のイメージを払拭
2019年に富山県射水市に建設した射水工場も異彩を放つ。同工場は機械組立の受注増に伴い、氷見本社工場が手狭になったことから新設を決めた。青と灰色に塗装された外観や木のぬくもりの感じられる内装などデザインを追求。およそ工場に似つかわしくない佇まいとした。高度に磨き上げた技術を裏付けに「製造業の印象を変えていきたい」(中村専務)。
「面倒くさがり」。中村専務は求める人材像をこう表現する。手間のかかる業務の改善・効率化に向けて、自ら動き考えられる人材というのが真意だ。自社の変革を実現する上でこうした人材が欠かせない。中村専務は「我こそは面倒くさがりという人にわが社の門をたたいてほしい」と相好を崩す。
人材育成については「従業員の自主性を最大限尊重している」(中村専務)のが特徴だ。例えば設計部門の志望でも、入社後に部品加工や機械組立、電気関連のエンジニアなど、多様なキャリアステップを踏めるようにしている。これは一貫体制を構築する同社の強みで「人事異動も本人の希望をできる限りくみ取っている」(同)という。自主性というと放任主義と捉えられがちだが「やる気のないことをやっても実らない」というのがスタンスだ。
「遊びのように時間を忘れて没頭できる仕事をしてほしい」と話すのは中村吉延社長。これまでの鉄工所のイメージを払拭しようと、今後もさまざまな施策に思案を巡らす。
理系出身の若手社員に聞く
新しいことにチャレンジできる職場
大学時代にロボットの要素技術を学んでいるうちに、3次元(3D)モデルを使った加工に興味を持ちました。当社は5軸加工機をはじめ、立体的な加工に強みを持っていることから入社を志望しました。 CAMを用いて加工機を動かすプログラム作成の業務に従事しています。特に複雑な制御が必要な5軸加工機向けのプログラムを作成し、実際にモノができあがったときは感動もひとしお。ここに一番やりがいを感じています。
当社は若い社員が多いのですが、自主性を重んじる社風で、若手の意見も非常に通りやすいのも魅力。新しいことにどんどんチャレンジできる職場です。
会社DATA
所在地 富山県氷見市上泉145-1
設立 1981年(創業1969年)
代表者 代表取締役 中村 吉延
資本金 1500万円
従業員数 84人
事業内容 各種機械装置の設計・開発・製造、各種機械加工部品製造
URL https://nakamurakikai.co.jp