ハブベアリング生産で世界トップシェア ―総合機械部品メーカーの技術、ノウハウを多様なフィールドで発展
記者の目/ここに注目
□金属3Dプリンターを駆使し最先端のモノづくりを実践
□一人ひとりの挑戦を支える職場環境
高雄工業は自動車、産業機械、精密機械の部品を生産する金属加工メーカー。飛躍の礎となった自動車向けの駆動部品であるハブベアリングの生産量は、世界トップシェアを誇る。米国、タイなどに生産拠点を持ち、技術力に対する顧客からの信頼は厚い。柔軟な発想で新しいモノづくりの発信を続けてきたチャレンジ精神は、創業以来変わらず、今に受け継がれている。そして、次代に向けた一歩として、これまでに培った経験、技術を生かし、新しい技術の開発、発信を担うグループ会社を2021年に設立。金属3Dプリンターを活用した高周波コイルの造形など新しいモノづくりにチャレンジを続けている。
等速ジョイント、ハブベアリングなど駆動部品を主力に生産し、旋削加工、研磨加工、熱処理加工と組立工程の一貫体制で培った豊富な経験、知識が強みだ。切削、研磨、熱処理など加工技術に磨きをかけ、開発力や生産技術力として昇華、成長してきた会社の歴史を振り返り、下村豊社長は「人と技術開発のつながりを大切にしてきた」と表現する。
グループ一体で新たな技術創造を推進
「新しいモノづくりにチャレンジ」を掲げて21年に設立したグループ会社「ティーケーエンジニアリング(TKE)」は、高雄工業グループの新しい技術開発の発信を担っている。下村社長は「社員一人ひとりが柔軟な発想で、柔軟性、スピードを持って、社会に新しいモノづくりを提供できるよう全力で取り組む」とグループ一体で技術創造を推進していく考えだ。新規分野に対しては、TKEが開発案件からの参入、顧客のニーズに応じた製品化に対応している。
設立3年目ながら、早くも事業として発展が期待できる成果を得ており、弾みが付いている。「一体造形誘導加熱コイル(AMコイル)」がそれで、熱処理シミュレーション(トポロジー最適化含む)と積層造形技術(AM)の融合という新しい手法を駆使。機械部品の焼き入れに使用する誘導加熱コイルを従来のロウ付け接合に比べて、安定して高性能に製作できる。熟練技能者が行っているロウ付け接合を金属3Dプリンターが担うことで、コストや作業負担の低減にもつながる。日本のモノづくりの競争力向上、発展に貢献するという評価を受けて「2023年〝超〟モノづくり部品大賞」の大賞を受賞した。
現在、AMコイル以外にも、工具や治具のほか、自動化に貢献するロボットを活用した搬送装置など次の候補となる開発を着々と進めている。高雄工業グループで培った技術や装置メーカーとしての技術、ノウハウをモノづくりの多様なフィールドで発展させていく考えだ。最先端技術に挑む社員を支えるための環境整備にも力を注いでいる。着実に実績を重ねているAMコイルでは増産、研究開発を促すため金属3Dプリンターを増設し、計4台体制とした。下村社長は「一人ひとりの挑戦を支えていく」奮起を期待する。
総合機械部品メーカーとして成長してきた高雄工業を中核に、グループ企業が技術革新を加速し、モノづくりの可能性を追求する。「技術で世界を変える」という理想の実現に向けて、新たな挑戦の一歩を踏み出した。
若手社員に聞く
新しいことにチャレンジできる職場環境
グループ企業のティーケーエンジニアリングで自動化、省力化装置の設計・製作を担当しています。想定外の課題に直面すると苦労もしますが、上司や先輩方からアドバイスをもらいながら解決した時は達成感とともに、成長を実感できます。入社前は自動化、省力化装置についての知識はありませんでしたが、自分で調べたり、上司や先輩方に聞いたりして知識を深めてきました。社内の明るい雰囲気や人間性を大切にすることが製品の品質を支えているのだと実感しています。
新しい出会いを通じて経験、学びを深める
仕事を通じて、新しい出会いの機会に恵まれていると実感しています。取引先企業との関わりはもちろんのこと、全国各地で開かれる展示会に技術相談員として参加しています。現在はグループ企業のティーケーエンジニアリングに出向し、金属3Dプリンターの造形データ作成とオペレーションを担当しています。この装置の取り扱いができる社員はまだ少なく、後輩に3Dプリンターの取り扱いについての指導も行っています。今後は教育マニュアルの作成にもチャレンジしていきたいです。
会社DATA
所在地 愛知県弥富市楠3-13-2
創業 1974年10月
代表者 代表取締役社長 下村 豊
資本金 9800万円
従業員数 (国内グループ)1100人
事業内容 自動車部品(等速ジョイント、ハブベアリングなど)および精密機械部品の製造
URL https://www.takao-net.co.jp/