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多彩な製品群を有する産業機械メーカー ―デジタル技術の開発を進め次世代のモノづくりを目指す

理工系×企業ジョブマッチング/芝浦機械
記者の目/ここに注目
□創業80年以上の長い歴史で培った高い技術力
□やりがいを感じられる責任のある仕事に早い時期から携われる
常務執行役員 R&Dセンター長 兼 R&Dセンター 研究開発部長
小久保 光典さん

製造現場で用いられる多種多様な機械を広く世の中に供給する産業機械メーカーの芝浦機械。1938年の創業当時は工作機械メーカーとしてスタートしたが、大型で加工精度の高い工作機械を製造する中で培った高度な技術やノウハウを活かし、現在では射出成形機やダイカストマシン、押出成形機、超精密加工機、産業用ロボットなど、実に多くの産業機械を手がける。1つの企業がこれほど多彩な製品ラインアップを揃える例は珍しく、国内に数多ある産業機械メーカーの中でも独自の地位を築いている。R&Dセンター長兼R&Dセンター研究開発部長の小久保光典常務執行役員は、同社が手がける製品の特徴として、「工作機械を例にあげてみても、大型・特殊・超精密と、汎用的でないものでも積極的に手がけているのが当社の強み」と話すほか、射出成形機は「高い精度が求められる工作機械の製造技術を持つ企業がつくる射出成形機」として、「専業メーカーに比べて市場の信頼性は高い」と胸を張る。

3つのカンパニーと2つのセンター

同社は経営の効率化や収益性の向上を図るために、2020年から組織形態をカンパニー制へ移行した。「成形機カンパニー」、「工作機械カンパニー」、「制御機械カンパニー」の3カンパニーとし、各カンパニーを横断的に支える組織としてR&Dセンターと生産センターも創設している。

小久保常務がセンター長を務めるR&Dセンターは、同社が行う研究開発の中でも難易度が高いもの、開発リスクを伴うもの、研究が長期にわたるものなどを担う研究開発の中枢と言える。特に力を入れているのは、各カンパニーでの新機種開発などに寄与する基盤技術の研究だ。基盤技術としての現在のメインテーマは、AIやIoT、XRなどのデジタル技術。特に同社では、実際にモノを製造する前の設計段階でデジタル上の検証を行い、初期段階で製品の完成度を高めていく「モデルベースデザイン(MBD)」を推進している。さらにその先には、設計から製造、保守、管理まで同社のモノづくりのあらゆる工程のシミュレーションをバーチャル空間で実行する「Virtual Lab.」の実現を目標に掲げる。最先端の技術を追求する研究意欲は非常に旺盛だ。そのため、機械メーカーではあるが、「ソフトウェア系の人材の出番は非常に多い」と小久保常務は強調する。

人材の成長スピードは非常に早い

多彩な製品群を有する産業機械メーカーであるため、事業の裾野は同規模の企業と比べてもかなり広い。各事業部門は少数精鋭で動いていることから、若手でも責任のある、やりがいを感じられる仕事に早い段階から携われる。「大企業ではあまり味わえない経験かもしれません」(小久保常務)。その中で自らの専門性を磨くケースもあれば、希望や適性に応じてカンパニー間を行き来して多様な仕事を経験するといったケースもあり、「社員の成長スピードは非常に早いと自負しています」(小久保常務)。教育制度も充実しており、会社が大学と連携し、社員として働きながら大学院の学生として博士号取得を目指せる「社会人ドクター」の実績もあり、今後も推奨していく方針だ。

Virtual Lab.(これはイメージで、実際の生産現場ではありません。)

学生に求めるのは「使う立場」から「つくる立場」への視点の転換だ。「学生のうちはユーザーとして製品を見る機会が圧倒的に多い。しかし、モノづくりの現場で求められるのはつくる側の視点。早くからそうした視点をもち、その中で自分に何ができるのかを考えてほしい」(小久保常務)。100年企業を目前にさらなる発展を目指す中、同社が理工系学生に向ける期待は非常に大きい。

若手社員に聞く
新たなAIの開発で熟練技術の継承に挑む

R&Dセンター 研究開発部 デジタルツイン開発課
星谷 拓さん(2019年入社)

製造現場で役立つAIの開発を担当しています。工作機械の加工状態の判別を行うAIや、熟練作業者の感覚の部分をAIに落とし込む取組みに携わってきました。製品ラインアップの広さを知り、日本および世界の産業を力強く支える会社であると実感したのが入社のきっかけ。人手不足や熟練者の引退で「これまで現場でできていたことができなくなっていく危機」を感じていますが、新たなAIの開発によってこうした課題の解決に挑めていることに、日々面白さを感じながら仕事しています。




先輩の助けで成長できたことがやりがいに

R&Dセンター 研究開発部 第二開発課
小川 美優さん(2020年入社)

設計段階で製品の問題を発見するために、コンピュータ上でさまざまなシミュレーションを行うCAE解析の業務に携わっています。多彩なモノづくりに関われることを魅力に感じて入社を決めました。当初はわからないことばかりでしたが、先輩の手厚い助けを受けながら解析業務を学んでいくうちに、解析の結果に対して自分なりの解釈をして設計上の問題に具体的な提案を行えるようになり、実際にその問題を解決することができた時が仕事のやりがいや楽しさを感じる瞬間です。

会社DATA
所在地   (本社)東京都千代田区内幸町2-2-2
      (R&Dセンター(相模工場))神奈川県座間市ひばりが丘4-29-1
設立     1949年3月(創業1938年12月)
代表者    代表取締役社長 坂元 繁友
資本金    124億8千4百万円
従業員数   連結3047人、単独1693人
事業内容   射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機、工作機械、超精密加工機、
       微細転写装置、高精度光学ガラス素子成形装置、産業用ロボット、
       電子制御装置、鋳物などの製造・販売及びレトロフィット・アフターサービス等
URL     https://www.shibaura-machine.co.jp

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