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自動車用樹脂金型で最高の技術力 ―製造技術を売る射出成形エンジニアリング会社

理工系×企業ジョブマッチング/岐阜多田精機
記者の目/ここに注目
□新車開発に参加し主要部品メーカーの困りごとに対応
□金型以外にも事業展開し、やりたいことがやれる会社
代表取締役社長 多田 憲生さん

「当社では新しいクルマづくりに参加できる」と多田憲生社長は強調する。岐阜多田精機は自動車などのプラスチック部品用の金型が主力だ。意匠性の高い内装品やシフトレバー、高耐久性の重要保安部品などの難易度の高い金型を得意とする。もし金型が作れなければ新規部品は量産できない。軽量化や高機能化のため樹脂部品の用途が広がりを見せる中、トヨタ自動車グループの主要部品メーカーなどから、他社ではできない“難題”の相談が持ち込まれる。同社の技術は樹脂金型業界で目指すべき規準と目されている。

社是は「善と豊かさの循環」だ。金型で部品の品質や生産性が決まってしまう。同社は顧客の困りごとに真摯に向き合い、技術を蓄積してきた。そして顧客が巨大企業であっても対等に向き合い、正当な対価を得る。

金型のプロフェッショナル

そのため設計者は、部品の形状や用途、材質、成形条件など、さまざまな要素を考え、知見をフル動員して全体最適を提案する。「受注からテストまで1、2カ月。自分の仕事の良し悪しが成形品の出来ですぐわかるのが金型づくりの面白さ」(多田社長)だ。加工工程では、工作機械のプログラミングと加工の担当を分ける同業他社が多い中、同社は1人がすべてを担当。全社員に「金型のプロフェッショナル」であることを求める。

多田社長はプラスチックの未来を「さらに可能性が広がる」と考えている。同社は、新たな素材や用途に対応し、次世代の自動車に加え、航空宇宙や医療、ITなど多彩な先端分野に金型を提供する。ハイエンド分野を中心に、日本製の樹脂金型の機能、品質は世界最高級。「地球環境のため今後はムダな生産はどんな国でも許されない。日本のていねいな金型づくりは世界でさらに評価される」と多田社長は説く。愛知県大府市、福岡県筑前町に加え、中国とインドにもグループの会社があり、活躍の場は世界に広がっている。

新技術の導入にも意欲的だ。3次元CAD/CAM/CAEや3Dプリンター、鮮明な微細加工ができるレーザーアブレーションなども業界に先駆けて導入してきた。注目を集めるIoT(モノのインターネット)も活用。金型の内部に温度や圧力のセンサを設けて成形時の状態を“見える化”し成形を高度化する「スマート金型」も自社で開発し実用化した。

主体性や学び続ける姿勢を評価

研究開発の対象は金型づくりにとどまらない。樹脂材料も研究。金型内で成形しながら塗装ができる特殊技術の事業化にも挑む。成形品の自動搬送装置も自社開発した。「金型ではなく製造技術を売る」と多田社長。「プラスチック射出成形エンジニア」として顧客にソリューション(課題解決)を提案する。情熱の対象は産業用途以外にも広がり、過去には3Dプリンターで鉄道模型製作を事業化した。地元の特別支援学校との交流をきっかけに、まっすぐ座り続けることが難しい子のための補助いす「サポートチェア・スマイル」も開発、同校に寄贈し発売もした。現在は再生可能エネルギー向けとして安全性の高い定置型蓄電池「バナジウムレドックスフロー電池」も開発中だ。

同社は金型技術を軸に、今後は多彩な事業を展開していく。「やりたいことができる会社」(同)であり、「こんなことがやりたい、こんな人になりたいと考えている人」(同)を求めている。技術系はもちろん、デザイン系などの人材も募集。社員の主体性や学び続ける姿勢を評価しており、本人の希望に沿って入社5年目で管理職に抜擢した例もある。また働きやすさにも配慮。本社2階にはトレーニングジム、絵本100冊や遊具がある託児スペースがあり、休日も従業員に開放する。IT技術などを活用し仕事の効率化も推進。「楽しい会社」(同)を目指している。

意匠性の高いシフトレバー
金型の微細な凹凸形状を成形品にクリアに転写できる

理系出身の若手社員に聞く
設計・ITツール導入・設備開発に活躍

営業技術部 設計 山本 夏生さん (2019年入社)

大学は工学部機械工学科で開発志望でした。率直に話す社長に惹かれ「やりたいことができる」と思い入社しました。従事する金型の設計は、考えたことがそのまま形になるのが面白い。仕事の進め方を自分で決められるのも良い点で、昨年は有給休暇をすべて消化 しました。

入社2年目から人工知能(AI)スケジューラーの全社導入をベテランと2人で主導しています。やりたいことができ、成形品の自動搬送装置も開発しました。将来は自分のアイデアで新規事業も立ち上げてみたいです。

会社DATA
所在地   岐阜県岐阜市東改田字鶴田93
創業    1964年(昭39)10月
代表者   代表取締役社長 多田 憲生
資本金   5500万円
従業員数  92人
事業内容  自動車部品・住宅設備・弱電機器などの金型設計・製作
URL     http://www.tada.co.jp/recruit/

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