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洗剤いらず、安全な洗浄技術「ウルトラファインバブル」の可能性

文= 寺坂宏一(慶応大学理工学部教授工学博士)
洗剤いらず、安全な洗浄技術「ウルトラファインバブル」の可能性

図1ウルトラファインバブルと身近な気泡との違い


まだ理論的解明が終わっていない


 ウルトラファインバブル水はウルトラファインバブルフリー水に比べ、付着物の剥離開始を速め、洗浄速度が促進させた。極めて微細なウルトラファインバブル群は付着塩とガラス面との接触境界面に浸透して付着塩とガラス平板との物理的な付着力を弱め、水流による剪断力(せんだんりょく)も手伝って剥離を促進した。最近の研究では水中のウルトラファインバブル数密度の増加とともに洗浄速度が向上している。

 ウルトラファインバブル水による洗浄技術はさらに食品工業、半導体産業、臨床医療、水産業、農業、化粧品などでも進められている。一方でウルトラファインバブルは生成や長期安定存在メカニズムに諸説あり、まだ理論的解明が完了していない。

 ウルトラファインバブルの産業応用をさらに確実に進めるためにはファインバブルに関する基礎研究や現象解析に取り組む科学者が分野横断的に結集し迅速な情報交換が必要であり、ファインバブルサイエンスへの入門者向け基礎教育も必要である。そこで2015年4月にファインバブル学会連合(http://www.fb-union.org/)が発足した。

地方に産業創出へ動く


 また、ファインバブル産業の健全な発展を導く規格創成、確かな製品として市場から信頼を得るための認証技術の確立などを目的として、2012年に一般社団法人ファインバブル産業会(http://www.fbia.or.jp/)が創設され、地方発のファインバブル関連産業創出および地域創生を目指して2015年にファインバブル地方創生協議会も設立され、現在9県が参加している。

 国際的にはISOのファインバブル専門技術委員会で日本を幹事国としてISO制定作業が行われている。

 ファインバブル技術はいまだ発展途上であり、研究者、企業および研究資金ともにまだまだ不足している。先端的研究成果ならびに評価の信頼性向上のためには、ウルトラファインバブルのサイズと数密度以外の諸物性に関する計測技術がいまだ不十分であり、今後の計測技術開発の進展が期待される。
日刊工業新聞2016年3月18日企画特集
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
注目されるファイバブルの解説です。ナノレベルの細かい泡を発生させる装置を作る技術は日本以外にないと言われており、期待が大きい産業。

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