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ドイツ・シーメンスは製造業のデジタル化を先導することができるか

ライバルGEに対抗、「ハノーバーメッセでデジタル化工場の将来像をお見せしたい」(同部門CEO)
ドイツ・シーメンスは製造業のデジタル化を先導することができるか

FA機器をベースにデジタル化シフトを進める(バイエルン州エアランゲンのFA機器技術サービスセンター)

 独電機大手のシーメンスがデジタル化へのシフトを急いでいる。ビッグデータ解析やサービス事業、3次元積層造形などを強化しており、モノのインターネット(IoT)技術の主役の座をめぐり最大のライバルである米ゼネラル・エレクトリック(GE)を強く意識しているようだ。シーメンスは元来、生産現場を支える工場自動化(FA)製品群に強みを持つ。デジタル技術が加わって総合力を強化する姿勢はGEのみならず日本のFA業界にとっても脅威だ。

 2015年12月にシーメンスが開いた技術開発に関する説明会。16年9月期の研究開発費を前期から3億ユーロ(約370億円)増やして48億ユーロ(約6000億円)にするといった内容の中で、強調したのがデジタル化への取り組みだ。ジョー・ケーザー最高経営責任者(CEO)は「シーメンスのすべてのビジネスにとってデジタル化は大きなパラダイムチェンジャー。大きな挑戦でありチャンスだ」と述べた。

「シナリティクス」は大きな挑戦でありチャンス


 一例として挙げたのが、独自のビッグデータ解析システム「シナリティクス」と、それを使ったサービスビジネス。シナリティクスは、ガスタービンや鉄道システムの保守メンテナンスなど自社サービスの効率化に使っている。

 すでに世界中で30万台の装置がこのシステムにつながり毎月17テラバイト(テラは1兆)のデータを収集しているという。ちょうどGEが「プレディックス」と名付けた同様のシステムを活用しているのと似ている。いずれGEと同様、外販していくはずだ。

 デジタル化を担う主役が、FA機器類を担当するデジタルファクトリー部門だ。営業利益率17・5%(15年度)と全社でも稼ぎ頭のこの事業。同部門CEOのアントン・フーバー氏は「我々の提案はオートメーションの領域をとっくに超えている」と強調する。

技術者の9割がソフトウエア


 実際に同部門の商品群は、FAの領域にとどまらなくなっている。「製品設計からサービスまで製造業の全体をカバーする基盤システムである『デジタルエンタープライズ』を提供する。今では技術者の9割がソフトウエア技術者になった」(フーバー氏)という。

 大きなきっかけになったのが、07年に3次元CADソフト大手の米UGSを買収したこと。その後シーメンスは約20社のソフト会社を買収。最近では流体シミュレーションソフトの米CDアダプコを9億7000万ドル(約1090億円)で買収すると発表した。

 買収による機能強化で、CADを中心としたシミュレーションソフトを強化。今や仮想環境上では、製品の設計にとどまらず製造ラインの設計やFAシステムの開発、試運転までこなせるようになってきた。生産現場の泥臭いFA機器に、高度なシミュレーションソフトを併せ持つのはシーメンスならでは。FAとCAD、双方の競合にとってやっかいな存在になっている。

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日刊工業新聞2016年3月15日/16日
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
シーメンスのデジタルファクトリー事業部があるニュルンベルクまでのこのこ出かけていって、この記事を書きました。ハノーバーメッセの事前説明会みたいな内容だったのですが、ほとんどドイツ語で、ドイツ語を同時通訳した英語がまた超早口で、全く聞き取れず、日本に帰ってきて録音音声を何度も聞き返してこの記事を書きました。なのでバリューがあるのかどうだかよくわかりません。

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