高効率・低コスト実現…東邦鋼機が窒化アルミテンプレート開発
東邦鋼機製作所(三重県四日市市、鈴木英資社長)は、三重大学と共同で開発したサファイア基板上窒化アルミニウム(AlN)テンプレートを発売した。サファイア基板上にAlN膜を形成したテンプレートで、光半導体デバイス用基板として深紫外線発光ダイオード(LED)などの製造に活用する。基板上のAlN膜を高効率化しつつ、価格は2インチで10万円以下(消費税抜き)に抑えた。初年度に1億円の売り上げを目指す。
三重大学大学院工学研究科の三宅秀人教授が開発した独自のスパッタ・アニール法に基づき、東邦鋼機製作所が量産に成功した。三重大が同法の特許を持ち、同社が独占実施権を得た。
AlN膜厚350ナノメートル(ナノは10億分の1)の同製品をX線回折装置で評価したところ、発光効率を左右する結晶性はAlN単体で構成したテンプレート(AlN自立基板)に近く、別素材の基板上にAlN膜を形成したテンプレートでは世界最高水準の結晶品質を持つ高効率のAlN膜であることを確認した。価格もAlN自立基板に対し10分の1以下と優れる。現在の月産能力は250枚だが、今後歩留まりを向上させて増やしていく。4インチの生産も視野に入れる。
深紫外線LEDはコロナ禍を機にウイルスや菌の不活化効果に注目が集まり、関連製品の市場投入が盛んだ。水銀ランプの代替品でもあり、現在も需要は大きい。だが、深紫外線LEDに用いる既存のテンプレートは、コスト面に優れる一方で結晶性に難があって発光効率が低かったり、結晶性に優れ発光効率は高いが非常に高価だったりした。東邦鋼機製作所と三宅教授は、これらの課題を克服するため同製品を開発した。
日刊工業新聞 2023年12月06日