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営業益目標を前倒し達成…ニコンの「生物顕微鏡」が好調なワケ

営業益目標を前倒し達成…ニコンの「生物顕微鏡」が好調なワケ

アステラス製薬の細胞培養双腕ロボット「まほろ」には、画像解析技術などを搭載したニコンの顕微鏡が実装されている

ニコンの生物顕微鏡が細胞の自動観察・判定をできる点が評価され、販売を伸ばしている。医薬品のモダリティー(治療手段)の多様化が進み、近年は低分子医薬品から細胞を使った医薬品の開発が活発化しており、製薬企業やバイオベンチャーは細胞の管理や評価に人工知能(AI)技術を搭載した生物顕微鏡を積極的に活用している。ニコンは創薬の効率化に取り組む製薬企業との提携を進め、ライフサイエンス領域で成長を狙う。(安川結野)

「新型コロナウイルス感染症をきっかけに、製薬企業やバイオベンチャーで細胞培養の自動化は不可欠という認識が強まった」。ニコンヘルスケア事業部ステムセル事業推進部の清田泰次郎部長は自社の生物顕微鏡の需要増をこう分析する。研究開発の現場でも人数制限の対策が取られる中、細胞培養の工程を進める上で自動化のニーズが高まった。また働き方改革の観点から、休日や夜間の管理を機械化する検討が進んだことも後押しした。

ニコンはアステラス製薬の細胞培養双腕ロボット「まほろ」に細胞の自動観察・判定を行う生物顕微鏡を提供しているが、自動化技術の導入は「大手の製薬企業だけでなく、欧米ではベンチャーからの引き合いも増えている」(清田部長)という。日本と比較して資金調達がしやすい欧米では、ベンチャーが開発力をつけている。新領域の開発において企業間の提携も活発化していることなどから、大手からベンチャーまで顧客の裾野が広がっているという。

顧客によって細胞の評価のポイントは異なるが、清田部長は「バイオやデジタルに関係する人材がおり、多様な顧客の要望に応えられるのがニコンの強み」と強調する。実際、AIを活用した画像解析技術を自前で持ち、細胞培養の自動化、高精度化を総合的に支援するソリューションとして提供できる点で、他社と差別化を図る。

ニコンは2025年度にライフサイエンスを含むヘルスケア領域で営業利益100億円の目標を掲げてきたが、生物顕微鏡システムが好調に伸び、22年度に115億円と前倒しで達成した。23年度も進行するプロジェクト数で20年度比倍増を見込んでいる。

25年度の生物顕微鏡の世界市場は5300億円と推定され、創薬支援分野として成長への期待が大きい。ニコンはハードとソフトウエア両面で支援できることを訴求していく。

日刊工業新聞 2023年12月5日

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