ニュースイッチ

オープンイノベーションプラットフォームとしてのWaaS共創コンソーシアム

JR東日本が運営するオープンイノベーションプラットフォーム「WaaS共創コンソーシアム」での活動について、その活動の一部を紹介してきた。前身となるモビリティ変革コンソーシアムの実績(JR東日本が展開するWaaS共創コンソーシアムとイノベーションへ向けた取組み)、デジタル技術を活用した新しい体験価値の提供(WaaS共創コンソーシアムの取組事例~デジタル技術で新しい体験価値を提供~)、駅利用者のリスク低減と地方創生に向けた検証活動(WaaS共創コンソーシアムの取組事例②~駅利用者のリスク低減と地方創生へ向けた検証活動~)などの取組は、オープンイノベーションプラットフォームとして機能するWaaS共創コンソーシアムの成果であり、今後も継続的な発展が期待されている。本稿では、モビリティ変革コンソーシアム(2017年度~2022年度)から、WaaS共創コンソーシアム(2023年度~活動中)に至るまで、エコシステムとして構築することができたポイントを紹介したい。

2017年度より本格始動したJR東日本のオープンイノベーションの取組は、2023年度よりWaaS共創コンソーシアムとして、その動きを着実なものとしている。ここでは、ここに至るまでの7つの成功のポイントを紹介する。
 2017年度からの活動を振り返り、コンソーシアムの全体構想を描く「ビジョン」、コンソーシアム内外の組織や生活者がつながり創造できる場を設計、提供する「オーケストレーション」、具体的な活動の企画から実行までの実務を機動的に推進する「オペレーション」の3つの視点でとらえ、成功のポイントを下記7つの事項であると考えている。

①既存の枠組みにとらわれずに、全体方針をデザインする
 ②失敗を恐れずに動き出す
 ③社内関係個所の理解を得る、既存活動とのアライアンスを取る
 ④社外を巻き込み、相互にモチベートし続ける
 ⑤より広く活発なコミュニケーションを通じて場の価値を高める
 ⑥変化を見ながら常にアップデートし続ける
 ⑦個人的な実務を組織知化し継続する

構想・企画期、立ち上げ期においては、ビジョン、オーケストレーション、オペレーションのすべての領域において、幅広い視野が必要であった。そのため、「①既存の枠組みにとらわれずに全体方針をデザインする」ことが必要であり、「②失敗を恐れずに動き出す」ことが成功の要因である。
 さらに、拡大期以降のオーケストレーションの領域では「③社内関係個所の理解を得る、既存活動とのアライアンスを取る」「④社外を巻き込み、相互にモチベートし続ける」により、参加メンバーのコミットメントを高めながら、内部および外部環境の双方の変化に柔軟に対応してきた。また、「⑤より広く活発なコミュニケーションを通じて場の価値を高める」ことで、コンソーシアム活動そのものの付加価値を訴求し、新たな連携を呼び込む呼び水としている。
 変わりゆく社会環境の変化に対しては、「⑥変化を見ながら常にアップデートし続ける」という点がビジョン、オーケストレーション、オペレーションの全ての領域で求められた。最後に、これらの活動は個人的な暗黙知のもとで行われることが多く、活動を継続的なものとするためには「⑦個人的な実務を組織知化し継続する」ことも重要な体制構築のポイントである。
 なお、上記の詳細は下記参考文献を参照されたい。

(参考文献)東日本旅客鉄道株式会社 入江洋、他『新世代オープンイノベーション JR東日本の挑戦 生活者起点で「駅・まち・社会」を創る』(2023年), 日経BP

今後のオープンイノベーションプラットフォーム:WaaS共創コンソーシアム

コンソーシアムの名称にもなっているWaaS®は、Well-being as a Serviceの略語であり、本活動を続ける中で創発された概念である。その射程は幅広く、現在WaaS共創コンソーシアムで取り組んでいるテーマも多岐に渡り、バリアフリー、地方創生、まちづくり、AI、XR、DXなど活動を開始した当時に想定していなかった領域に広がりつつある。
 モビリティの概念に留まらず、WaaS®にまで拡張されたことは、それだけ外部の環境変化が大きかったことに加え、その変化に柔軟に対応してきたということである。今後も、モビリティそのものはテーマとして対象領域としつつ、移動と移動に伴う空間という、より大きな対象の捉え方で、新たな課題やニーズを発見し、その解決に向けた活動を継続していきたい。

活動テーマ一覧(2023年10月時点)
【WaaS共創コンソーシアムについて】
通年で会員を募集しており、既存の活動テーマのみならず、新しい取組テーマの希望がある場合には、下記webページを参照していただきたい。特定テーマの調査・実証活動等を推進する運営会員、本コンソーシアムの活動に関する情報の収集等にのみ参加する一般会員の2種類の種別がある。企業、大学、自治体など、多様なプレイヤーが参画しており、本コンソーシアムの趣旨に賛同いただける会員を募集中である。その他問い合わせも下記webページまで。

WaaS共創コンソーシアム:JR東日本 (jreast.co.jp)

編集部のおすすめ