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「トヨタの組織改革は『オポチュニティ』」(章男社長)

1000万台時代へ。『もっといいクルマづくり』と『人材育成』に挑む
 トヨタ自動車が4月18日付で社内カンパニー制導入を軸とした組織改革に踏み切る。トヨタが強みとしてきた機能軸の組織を解体するとともに、実質的に”工販“を分離するという大がかりなものとなる。「(年間販売)600万台と1000万台では仕事の進め方を変えないといけない」と指摘するトヨタ首脳。組織改革をきっかけにクルマづくりの進め方や社員の意識を「1000万台時代」に見合った形にシフトするのが真の狙いだ。

“巨艦”の弱み


 「トヨタは規模が大きいことが最大の弱み」。トヨタ首脳は世界一の生産・販売台数を誇るトヨタが抱える課題を、こう表現する。一度決めると一気に動くと言われるトヨタだが規模が大きくなるにつれ、その決断自体が遅くなってきた。

 2015年末発売の新型ハイブリッド車(HV)「プリウス」から導入を始めた設計改革「TNGA」にしても、首脳は「マツダは(同じような取り組みを)前からやっている。トヨタは1周遅れている」と率直に語る。

 機動力を高めるため足かせとなっていたのが製品企画本部や技術開発本部、車両系生産技術・製造本部など機能軸の組織だ。以前は各機能はトヨタの強みだった。それぞれの専門領域を深掘りすることで全体の競争力強化につながっていた。首脳の言葉を借りれば600万台までは、それで成長できた。

 しかし各機能にはそれぞれ思想があり強い発言力も持つ。クルマづくりを進める上で機能間の調整や説得には多くの時間を要する。その問題が1000万台に近づき、そして超える中で顕在化、深刻化してきた。

 今のトヨタは、本来すべて「もっといいクルマづくり」に向かうべきエネルギーの多くが、そうした社内調整に浪費されているというわけだ。“大企業病”にむしばまれ始めているとも言えるだろう。

経営幹部に当事者意識は?


 豊田章男社長は今回の組織改正の狙いについて「『もっといいクルマづくり』と『人材育成』を促進する『オポチュニティ』にしたい」としている。ポイントの一つはトヨタの強みである機能本部を思い切って解消することだ。技術開発や生産技術については先行開発と量産部分に分けた上で、量産部分を製品群別に設けるカンパニーに組み入れる。

 車両事業は新設する小型車の「トヨタコンパクトカー」、乗用車の「ミッドサイズビークル」、ミニバン・商用車の「CV(コマーシャルビークル)」に、もともとある程度の機能を持っていた高級車ブランド「レクサス」の「レクサスインターナショナル」を加えた4カンパニーに再編する。

 各カンパニーには「5年スパンの商品計画」(トヨタ広報部)の権限も付与する。工場や関連する車体メーカーも各カンパニーに組み込む。例えばトヨタコンパクトカーには子会社のトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)が、CVにはトヨタ車体が、それぞれ参画する。ミッドサイズビークルには元町工場(愛知県豊田市)、高岡工場(同)、堤工場(同)の機能を移管する。

 これらカンパニーのプレジデントには専務役員が就任し車両の企画から生産まで一貫して責任を持つ。”巨艦トヨタ“を、より”小さいトヨタ“でくくって回すことで課題となっている機動力を高める。

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日刊工業新聞2016年3月14日 「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
複数の事業を持つコングロマリット企業はさまざまな組織の事例があるが、ほぼ単一製品でここまで巨大組織を動かしていくのは史上初めてに近い(自動車業界ではGMがそれに近かったが)。実際にプレジデントの権限がどのように担保されるか注視したい。章男社長がしばらくトップの座にいるのであれば、彼らの「いいクルマ作り」へのモチベーションマネジメントどうするか。対価は報酬なのか、さらなる何らかのポストなのか。

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