大型M&Aで注目の医療機器。進化する画像診断装置、広がる検査領域
キヤノンが買収する東芝メディカル、看板製品「CT」の実力
超音波画像診断装置、肝臓など治療分野広がる
超音波画像診断装置はCTやMRIのように病院内に大規模な専用検査室を設ける必要がなく、現場に装置を移動させて手軽に診断できる。産婦人科や整形外科での利用が多かったが、リアルタイムで3次元画像を取得できる特徴を生かし、肝臓や腎臓などの腹部、前立腺、脳血管などの治療分野にも活躍の場が広がっている。
フィリップスエレクトロニクスジャパンは13年に国内販売したフラッグシップ機種を大幅モデルチェンジし、治療分野を開拓するための戦略機種「エピック・エボリューション1・0」を投入した。CTやMRIの画像と超音波診断装置の画像を融合させて、治療をサポートする機能を拡充したのが特徴だ。
指紋認証のように血管の立体構造をもとに各装置の画像の位置合わせを自動で行う機能、顔認証と同様に臓器表面の形状データで位置合わせする2種類の機能を搭載。従来のマニュアル操作で5―10分かかっていた画像融合作業が1分程度で済む。同機能はまずは肝臓をメーンにしており、前立腺、乳腺、甲状腺などにも機能を広げていく。
医療機関での画像診断装置の使用頻度は今後も世界で高まっていく。特に超高齢社会に突入する日本ではそれが顕著だ。疾患の形態が大きく変化し、慢性疾患を複合的に抱える高齢の患者が増える。慢性疾患は定期的な検査・診断が必要になる。装置1台の機能を多様化することと患者負担の軽減は大きなニーズであり、国内では高機能機種への買い替えが活発化していく。
(文=宮川康祐)
※内容は掲載時のもの
日刊工業新聞2015年5月4日ヘルスケア面の記事を一部修正