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公共交通が持つ価値を可視化する「クロスセクター効果」とは?

公共交通が持つ価値を可視化する「クロスセクター効果」とは?

ローカル鉄道のイメージ

全国の自治体が赤字の公共交通をどう再構築するか悩む中、公共交通が持つ価値を多面的、定量的に判断するクロスセクター効果という新たな判断基準が注目されつつある。赤字の電車やバスを運行するための財政支出と、公共交通が生み出す経済振興や健康増進、地域のブランドイメージの向上などの効果を定量的に見える化するものだ。国土交通省は全国の自治体に紹介していく考えだ。

国土交通省によるクロスセクター効果

クロスセクター効果はグローカル交流推進機構の会長を務める土井勉氏がクロスセクター効果研究会を立ち上げ考案した。2017年度に近畿運輸局が着目し自治体向けリーフレットを作成、その後国交省の総合政策局も研究会の活動に協力している。

10月31日には研究会がクロスセクター効果の算出ガイドライン(標準版)を発刊、誰もが同じ基準で効果測定できるようになった。公共交通による医療、商業、教育、観光、福祉、財政、建設などの各分野のプラス効果と、運行のために行政が負担する財政支出を定量的に比較できる。赤字路線を廃止すれば医療送迎やスクールバスなど生活を維持するための代替費用が赤字を上回る可能性もあり、定性的な議論ではまとまりにくい。国交省の担当者は「公共交通のさまざまな価値を見える化し、再構築を判断する際の一つの手段としてもらえれば」とする。

兵庫県福崎町は姫路市と連携したコミュニティーバスで、社会実験を経てクロスセクター効果に基づく運行計画を策定、実行した。その結果、20年度からの2年間で利用者は2倍となり、クロスセクター効果は20年度の318万円から22年度は1719万円と5倍になった。地域振興課の藤田裕文課長補佐は「公共交通の地域カバー率は97%、町民が安心して生活し続けられるようになった」という。通勤手段ができたことで10人以上の障がい者雇用が生まれるという副次効果もあったという。

日刊工業新聞 2023年11月08日

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