全国で解禁…タクシー・バス・トラックの貨客混載輸送に期待と不安
30日からタクシーや貸し切りバス事業者が貨物を、トラック事業者が乗客を輸送する貨客混載輸送が全国で可能になる。これまでは乗り合いバスのみ全国での貨客混載が認められていた。国土交通省は5月30日に通達を出し、人口3万人未満の過疎地域でしか認められなかったタクシーや貸し切りバス、トラックでの貨客混載を全国に広げる。ドライバー不足は都市部でも深刻で、各輸送リソースを活用し効率的な輸送の実現を目指す。(編集委員・板崎英士)
新たな制度は過疎地以外での運用の場合、地方自治体とバス・タクシーやトラックの地域の関係者が協議し、公正な競争ができることを条件とした。
自動車輸送については2017年9月の規制緩和以降、さまざまな社会実験が行われてきた。20年には新型コロナウイルス感染症で苦境に陥るタクシー事業者による弁当など食料品の輸送も可能にした。過疎地に限っていた路線バス以外の貨客混載については、21年4月に複数の地方自治体からスーパーシティ提案を通じて見直し案が出された。検証の結果、各地でさまざまなニーズがあるとして規制を緩和する。
輸送を取り巻く背景は年々厳しくなっている。人手不足をはじめドライバーの過重労働の改善、業務の効率化や平準化、駐車スペースの確保、車両の脱炭素化などさまざまな課題がある。過疎化が進む地域の公共交通の維持や、ラストワンマイルの輸送手段の確保も必要。貨客混載の緩和は、こうした複数の課題解決の一助としたい考え。斉藤鉄夫国土交通相は27日の閣議後会見で「地域の公共交通の持続可能性を高め、トラックの2024年問題(運転手の時間外労働の規制強化)の解決にもつながる」と期待する。
ただ現場には期待と不安の両方があり、各業界とも様子見のスタートだ。全国ハイヤー・タクシー連合会の業務課の担当者は「貨客混載で効率化できることは理解しているが、まだ都市部で貨物に参入したいという事業者は聞こえてこない」という。全日本トラック協会の星野治彦企画部長は「協議が整えば、過疎地以外でもトラックが行かない所へタクシーなどで貨物を運ぶことはあるだろう。ただトラックで旅客を運ぶのはどの事業者からも聞かない」という。3万人以上の自治体にも制限が緩和されたが、実際には市町村合併で拡大した市の中山間地域からの運用が現実的と見られる。