楽天モバイルがIoT向け本腰、MVNO法人契約好調でも求められる体制
移動体通信事業者(MNO)から回線を借りて通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)で法人契約の比率が高まっている。NTTドコモの「イルモ」などMNO各社による低料金プランの投入でMVNOは個人向け契約が伸び悩む一方、デジタル化の進展に伴ってIoT(モノのインターネット)端末向けの契約が増えているためだ。第5世代通信(5G)の普及も踏まえ、大容量データの高速通信に対応した法人サービスで契約数の上積みを目指す。(編集委員・水嶋真人)
MVNO最大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は法人向け携帯通信(法人モバイル)事業の契約数が8月に200万回線を突破した。MVNO事業部の小野大典ビジネス開発部長は「子供用の見守り端末、道路や河川、工場の生産ラインの状況把握ができる監視カメラなど、IoT端末向けの契約が伸びた」と要因を説明する。
IIJは個人向け携帯通信プラン「IIJmio(ミオ)」の6月末時点の契約数が前年同月比6・8%増の120万3000回線にとどまる。MVNO大手のオプテージ(大阪市中央区)の携帯通信プラン「mineo(マイネオ)」も、6月末時点の契約件数が同約4%増の約126万件で、大きく成長しているとまでは言えない。
政府の通信料値下げ要請を踏まえ、ドコモやKDDIなどのMNOは、2021年からオンラインで申し込みを受け付ける割安な料金プランなどを投入。この結果、MVNOは武器としてきた価格優位性が薄れ、伸び悩みを余儀なくされている。
ただ、足元でIIJの法人モバイル事業の契約回線数は前年同月比30%以上の増加を記録。オプテージもIoT端末向けなどの需要増でマイネオに占める法人契約の割合が1割強まで増えており、法人契約の重要性がMVNO各社で高まっている。
調査会社のMM総研(東京都港区)によると、MVNOがSIM(加入者識別モジュール)カードを活用して独自の料金プランで提供する回線サービスである独自サービス型SIMの回線契約数は、25年3月末に23年3月末比30・3%増の1710万回線となる見通し。この49・4%をIoT回線向けが占めると予測する。
IIJの小野部長は「5Gの特徴である多数同時接続、低遅延を生かし、高精細映像の伝送などに対応した法人向けサービスも強化する」と今後の意気込みを示す。ただ、MNO最後発の楽天モバイルが低料金を武器にIoT端末向けなどの法人契約獲得に本腰を入れ始めた。安さだけではなく、1枚のSIMカードで複数の携帯通信網に接続可能な「マルチプロファイルSIM」など、顧客企業の要望に柔軟に対応できるサービス体制の確立も求められる。