従業員と経営側の対立が決定打…5期連続赤字に陥った出版社、倒産の顛末
健康雑誌のパイオニア『壮快』、女性向けに美容や健康に関する情報誌『ゆほびか』、健康情報全般を掲載する『安心』、家電や文房具などの最新情報を紹介する実用情報誌『特選街』の発行を手がけていたマキノ出版(1977年10月設立)。書籍やムック本なども年間90点ほど出版していたが、23年3月に東京地裁より再生手続き開始決定を受けた。その後、一部事業は別会社に譲渡できたが、残る事業に対するスポンサー企業は現れず、6月に破産へ移行した。
いわゆる出版不況で10年2月期以降の売り上げは右肩下がりだった。インターネットやスマートフォンの普及などで情報の収集方法が変化したためだ。19年には本社ビルを売却し、リストラに着手したが、コロナ禍で主力雑誌の購読者層である高齢者の外出控えが裏目に出た。巣ごもり需要で好調となった冊子もあったものの厳しく、21年に『特選街』を休刊。22年2月期の年売上高は約14億5600万円に減少し、損益面は5期連続赤字となった。
民事再生となる半年前から任意整理による再建を目指し、アドバイザーとともにスポンサー探しを進めていた。だが、スポンサー候補先が出資の条件として「労働組合の解散」を挙げ、折り合いがつかず辞退されてしまう。その間に退職者が増え、退職金の支払いで現預金が枯渇したため法的整理をせざるを得なくなった。
従業員と経営側の対立が浮き彫りになった債権者説明会の質疑応答では、従業員や退職者、労働組合関係者からの質問がヒートアップするなど、従業員側の強さが垣間見えた。その一方で連絡の不手際など、取引先に対しては手際の悪さが目立った。会社は従業員がいてこそ成り立つが、現預金の流出が激しければ、給与・退職金の両面で“痛みを伴う経営”も必要となる。早期に従業員も経営層も一体となることができていれば、違った結果になっていたかもしれない。(帝国データバンク情報統括部)