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リケン・日ピス経営統合、狙うノウハウの「いいとこ取り」【両社長インタビュー】

リケン・日ピス経営統合、狙うノウハウの「いいとこ取り」【両社長インタビュー】

7月の会見で笑顔をみせる前川リケン社長(左)と高橋日ピス社長

相互補完で経営資源投入 キュッシュフロー、事業効率化で増強

ピストンリングメーカー大手のリケンと日本ピストンリングは、10月2日に共同持ち株会社の「リケンNPR」を設立し、経営統合する。脱炭素化を背景に市場縮小が予想される自動車エンジン部品事業では効率化を図り、次世代のコア事業に経営資源をシフトする狙い。3年以内に事業会社の統合などの組織再編を実施する方向で、部門ごとに段階的に統合を進める。

当初は4月の経営統合を予定していたが、公正取引委員会による企業結合審査が長引き10月に延期した。統合により既存事業を効率化しキャッシュフロー創出力を強化。余剰を新たな領域に振り向ける。

同じピストンリングを手がけていても表面処理の方法や工順など両社で異なる点も多く、ノウハウの「いいとこ取り」でさらなる品質向上を狙う。また両社で製造リソースを相互補完し内製化も進める。

開発面で重複するテーマがあった場合は開発人員を合流するなど効率化する。新エネルギーではリケンが水素、日本ピストンリングが合成燃料やバイオ燃料に注力しており、複数の選択肢を持つことで今後の市場動向の変化に備える。

インタビュー

リケンNPRの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任するリケンの前川泰則社長、社長兼最高執行責任者(COO)に就任する日本ピストンリングの高橋輝夫社長に、今後の方向性を聞いた。(増田晴香)

人員 無駄なく再配置
会長兼CEOに就任する前川泰則氏

―市場の期待が大きいです。
「エンジン部品への依存度の高い2社が統合するとどうなるか、どういったシナジーが生まれるかといった興味・関心や期待を持たれている。10月以降に新会社としての中期的な大方針を公表する予定だ」

―これまでの交流の内容は。
「統合委員会を定期開催している。経営企画や経理、人事、製造など機能別に分科会を開いて今後の方向性について、制限の範囲内で議論を進めてきた」

―2026年度に事業会社の統合を計画しています。
「3年以内に全体の統合を目指すが、間接部門をはじめ、できるところからアジャイル(機敏)に統合を進める。特に営業部門は取引先にとっての混乱がないよう早い段階で窓口を一つにする。製造部門は顧客のニーズに基づきタイミングや方法を判断していく」

―次なるコア製品の開発に経営資源をシフトします。
「乗用車向けエンジンの新規開発案件は減少している。両社の既存事業のリソースはおそらく余剰が出るためリーン(無駄のない)にしていく必要がある。エンジン開発に携わっている技術者を新事業に再配置するなどして新規の開発を加速する」

新事業でコラボ加速
社長兼COOに就任する高橋輝夫氏

―当面の取り組みは。
「10月2日以降はこれまで情報交換が制限されていた詳細な事業構造についても情報を把握していく。また、リケンが手がけている新事業の開発状況についても学び、当社が種をまいている新事業とどのようにコラボレーションできるのかを検討していく」

―既に製造の相互補完に着手しています。
「例えばピストンリングの生産ではリケンが外注していた鋳造素材を当社で内製したり、当社のメッキの設備が老朽化している部分はリケンにお願いするなど、すぐに効果が出せる部分もある」

―既存事業の伸びしろは。
「海外の競合は今後自動車エンジン向けの積極投資をしないと思うので狙い目。ピストンリングは日本の3社が技術面でも強く、自動車メーカーへの提案力もある。市場は縮小していくがグローバルでシェアを拡大し、減産にならないようにしたい」

―新会社にかける思いは。
「同業で同じ製品を作っていても技術や文化に違いがある。単独では気付けなかった日本ピストンリングの強み、弱みにも気付かされ、非常に刺激を受けた。これから企業価値を高め、いい会社にしていければよい」

日刊工業新聞 2023年09月29日

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