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元宇宙飛行士・土井隆雄氏が挑む「木材使った人工衛星」の意義

元宇宙飛行士・土井隆雄氏が挑む「木材使った人工衛星」の意義

京都大学特定教授・土井隆雄氏

京都大学は木材を使った人工衛星を開発している。これには宇宙飛行士として日本人で初めて船外活動を行った経歴を持つ土井隆雄特定教授が大きく関わっている。宇宙飛行士としての立場でなく、教え子や連携する企業など多くの人とともに宇宙を体感したいという。土井特定教授に木材を活用した人工衛星の開発の意義や宇宙への思いなどについて話を聞いた。

―大学を中心に小型人工衛星の開発が活発になっています。
 「若手の教育に役立つため、多くの大学で取り組みが進んでいる。もともと私は宇宙工学のエンジニアであり、宇宙飛行士時代は宇宙ステーションの試験に携わっていたこともあった。そうした経験を京大で活かしている」

―人工衛星に木材を活用する狙いは。
 「宇宙空間に漂う人工衛星などの残骸はかねて問題になっており、対策として1990年代半ばから地球を周回する先進国の人工衛星を赤道下に落下させていた。ところが大気汚染のほか、異常気象につながる可能性があるエネルギーの不均衡をもたらしていた。時間はかかるが生分解の木材を人工衛星に活用することで、この課題を解決できると考えている」

―ほかに宇宙ゴミを減らす理由はあるのですか。
 「08年搭乗のエンデバー号に宇宙ゴミがぶつかり、機体の一部が破損した。実際は運航に支障はなかったが、地球に帰還できなかった可能性もあった。宇宙に行くことは人類の進化における過程の一つと位置付けている。こうしたことが起きると、人類が宇宙に行く上で障壁となってしまうのではないか」

―宇宙開発への率直な思いは。
 「国連宇宙部の在籍時、多様な国の人と接した。そこで先進国の人でなくとも、多くの人に宇宙での感動を味わってほしいと考えるようになった。木材が宇宙で大いに活用できる可能性があることが曝露実験を通じて分かり、この結果については驚きもあった。木材の宇宙利用について引き続き研究を進めていく」

【記者の目/大学通じ宇宙開発を底上げ】
 教育者・研究者として第二の人生を歩んでいるが、この活動を通じて宇宙への挑戦を続けている。自らの知見を活用して若い人と交わりながら開発に取り組む様子は生き生きとし、印象的だった。宇宙への技術力の底上げと課題解決の検討などを網羅できるところに、大学を軸に据えた宇宙開発の良さが感じられる。(大阪・石宮由紀子)

日刊工業新聞 2023年09月27日

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