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勝ち技で価値創出、豊田合成がサプライヤーと関係性再構築で競争力

勝ち技で価値創出、豊田合成がサプライヤーと関係性再構築で競争力

資源循環システムの開発で協業する豊田合成開発本部の小林ゴム材料技術室室長㊧とエムエス製作所の諏訪副社長

豊田合成がサプライヤー(仕入れ先)との関係性を再構築している。部品や加工の依頼だけでなく、製品価値の向上や工程改善などに関する相互提案、情報交換を始めた。仕入れ先各社にとっては車の電動化で既存製品の数量が減る不安がある中、顧客である豊田合成との連携で新ビジネス創出への期待が生まれる。仕入れ先の強化はサプライチェーン(供給網)全体の発展にも寄与。協力が競争力の源泉になる。(名古屋・川口拓洋)

豊田合成と同社の仕入れ先企業で構成する協力会「協和会」。相互のコミュニケーションを活発化しており、その象徴が協和会が主催する「勝ち技展示会」だ。このほど豊田合成の北島技術センター(愛知県稲沢市)で2022年に続き2回目となる展示会を開催。前年比5割増の30社が「技ブース」を設けた。

「(仕事が)ない、ないと言っていても始まらない」と話すのは協和会の近藤茂充会長(近藤製作所〈愛知県蒲郡市〉社長)だ。電気自動車(EV)の普及により加工や部品が減り、事業構造の改革を迫られる企業も少なくないが、近藤会長は「中小企業も自己表現し、次のビジネスモデルをつくらなければならない」と強調。そのため協和会と豊田合成では22年の展示会以降、意見交換会や技術見学会、セミナーなどの機会を設けてきた。「豊田合成に役立つものを我々もきっと持っている。ニーズと技術を共有すれば協業できる」(近藤会長)という。

サプライヤーから説明を受ける豊田合成の齋藤克巳社長㊧

22年の展示会に参加した企業のうち複数社で協業の実績が生まれ始めた。エムエス製作所(同清須市)は豊田合成とゴム廃棄物を真空下で加熱・分解し、油とカーボンに分離する実証を始めた。豊田合成開発本部の小林憲治ゴム材料技術室室長は「ゆくゆくは、処理したものを再び製品に戻すことを目指す。30年までにはめどを付けたい」と意気込む。エムエス製作所の諏訪裕吾副社長は「良い技術がある。せっかくならば役立てたい」と話す。

近藤製作所は部品搬送箱を積み降ろしするガントリーシステムを提案。豊田合成のみよし物流センター(同みよし市)での実証に向け準備を進めている。近藤製作所の村松勲営業部門長は「製造現場だけでなく搬送の人材確保も難しい。(豊田合成の)ニーズとマッチした」と語る。

このほか展示会では各社が個性を光らせた。ヨコヤマ精工(同豊田市)はプレスと金型の技術を組み合わせ、二つの工程を一つにまとめるなど生産コストの半減をアピール。愛知皮革工業(名古屋市北区)は革製品の加工費や材料を最適化する生産方法を紹介した。

豊田合成の苗代光博取締役執行役員は「仕入れ先の方々と現地現物で会話できることは新たな共同事業につながる。一緒に進化していきたい」と話す。


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日刊工業新聞 2023年09月25日

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