ニュースイッチ

【キーマンに直撃】米IBM流、業務効率化での生成AI活用術

生成人工知能(AI)の登場で業務アプリケーションの自動化が飛躍的に進む見通しだ。その中核となるのは基盤モデルであり、米IBMは大規模言語モデル(LLM)だけでなく、社内実践をテコにITオートメーションモデルやデジタルレイバー(仮想知的労働者)モデルなどで先陣を切る。IBMワールドワイド・オートメーション・セールス担当バイスプレジデント(VP)のラブロス・キソーラス氏に取り組みの状況を聞いた。

―基盤モデルを社内でどう活用していますか。
「LLMは質問への応答やテキスト生成、翻訳などで知られるが、周知の通り、プログラミングコードも自動生成できる。(プログラミング言語の)Javaで書いたモノスティック(一枚岩)なコードをロジックを変えずに、『マイクロサービス』と呼ぶ小さな部品に分けることも可能。Javaからマイクロサービスには70―80%という高精度で自動変換できる。コボル言語からjavaへの変換はもっと精度が高い。いずれもアプリのモダナイゼーション(近代化)に有効だ」

―生成AIの活用で社内業務はどの程度効率化しましたか。
「生成AIはソフトウエアの開発や運用に大きなインパクトをもたらす。社内実践では中央演算処理装置(CPU)の消費量を6カ月間で従来比64%削減し、全従業員30万人が使うアプリの数も1800個減らせた。基盤モデルの活用でIT全体のオブザーバビリティー(可観測性)も向上する。トラブルが生じても即座に対処できる上、ビジネスへの影響を踏まえて、どこを先に修正すればよいかといった優先度も分かる」

―デジタルレイバーモデルの利用状況は。
「当社全体の業務を基盤モデルとして学習し、それを各部門に展開する計画だ。オーケストラのように多くの要素をつなぎ合わせ、複雑な業務処理を自動化して効率を高める。作業手順の順序付けではなく、利用者の要望に合わせてリアルタイムに組み立てる」

―具体的には。
「人材採用で『デジタルレイバー・オン・ヒューマンリソース』を試行中だ。会話型インターフェースを通じて、仕事関連の会員制交流サイト(SNS)から候補者を複数探し出し、面接の日も自動調整するなど、人事担当者が担う煩雑な業務を自動化できる。ほしい人材をAIモデルに伝えれば自動で探してくれる。デジタルレイバーモデルは人事だけでなく、さまざまな部門に展開する」

【記者の目/知見の迅速な普及に期待】
取材時に披露してくれた人材採用の基盤モデルのデモは圧巻だった。実在の人物のように的確に仕事をこなすデジタルレイバーモデルを目の当たりにし、近未来のオフィス風景が頭に浮かんだ。キソーラスVPは「次の世界は基盤モデルが中心だ」と自信を示す。先行事例で確立した知見を迅速に広めていけるか注目したい。(編集委員・斉藤実)

日刊工業新聞 2023年09月19日

編集部のおすすめ