江戸時代から続いた印旛沼との戦い―自然災害を克服してきた歴史と新たな展開

  • 1
  • 0
印旛沼開拓事業および印旛沼開発事業(1946年着工、1969年完成)

印旛沼二期農業水利事業のあらまし


 そして現在、農業用の用排水機場やパイプラインなどの施設は造成から40年以上が経過し、地域の用水需要などの変化に伴う用水不足と、老朽化に伴う施設機能の低下があいまって、維持管理に多大な経費と労力を要するとともに、一部地域によっては、排水不良が生じていた。また、周辺地域の人口増加や経済発展による印旛沼の水質の悪化という新たな問題も発生していた。

 このため、農林水産省では2010年から「印旛沼二期農業水利事業」を実施しているところである。本事業および関連事業により、農業用用排水の合理化、低地排水路から末端水路まで一貫した循環かんがい施設の整備を行うことで、地区全体の農業用水の安定供給と排水不良の改善が可能となるとともに、維持管理の軽減を図ることを事業の大きな目的としている。

 整備対象となっている6カ所の機場のうち、白山甚兵衛機場は2015年春に完成、ほか5カ所の機場(宗吾北、吉高、宗吾西、埜原、一本松)、送水のためのパイプラインなどについても、一部は設計や工事を進めているところであり、残りは今後、設計に着手していく。

 また、同事業による機場などの整備によって循環かんがいを実施することにより、印旛沼への水質負荷を軽減することで、農業用水の水質保全を図り、流域の水質保全にも寄与する計画となっている。

印旛沼の水質保全との関わり


 これまでは水田から出ていた排水を印旛沼へ排水していたが、循環かんがいを行うことにより、その一部を用水として再利用することで、印旛沼への水質負荷を軽減し、印旛沼の水質保全に寄与できることになる。この結果については、水路などの水質のモニタリングを行っており、印旛沼に与える水質負荷の軽減について、すでに定量的に効果が確認できている。

 また、用排水機場や幹・支線用水路などの施設整備のみならず、関係機関と連携して、地域の環境保全型農業(減農薬・減肥料)の推進を併せて進めることで、一層の水質保全を目指している。

 2015年度については、消費者や農業者に対して環境保全型農業の説明を行い、消費者にそうした農産物を認知してもらうとともに、農業者にそうした農法に興味を持ってもらう契機とした。環境保全型農業で生産された農産物は印旛沼の水質改善にもつながりうるもののため、農産物直売所などで「ちばエコ農産物」を見かけたら、手に取ってもらえると幸いである。

日刊工業新聞2016年2月29日 特集面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

図にもありますが、グーグルマップで印旛沼を見ると沼が二つに分かれているのがよくわかります。300年近く続いてきた水害との戦いですが、水の恵みを生かし、共存する農業へと発展を遂げつつあるようです。

関連する記事はこちら

特集