夏のインターン本格化、ルール変更の影響は?
2025年卒業予定の学生を対象とした夏のインターンシップ(就業体験)が本格化している。政府によるインターンのルール変更に伴い、企業はインターンで得た学生情報を採用活動に利用できるようになった。5日間以上の日程で半分を超える就業体験の場合が対象で、長期インターンや実践的プログラムの導入を検討する企業が増えつつある。インターンが採用に直結することでインターン生の採用比率が一段と高まりそうだ。
4類型、ジョブ型も
インターンはこれまで就業体験の有無や期間の長さが企業でバラつきがあった。そこで四つに類型化した学生のキャリア形成支援活動を産学で整理し、汎用的能力・専門活用型「タイプ3」と高度専門型「タイプ4」をインターンとして定義した。政府も学生情報を採用に利用できなかった従来方針を転換。インターンに参加した学生に会社説明会の案内を出したりできるようになった。日本精工は「弊社の働き方や業務内容をよく知った学生を採用につなげられれば、学生と企業とのマッチング度合いが高まると考える」と期待する。
こうした枠組みの中で、企業の取り組みも活発だ。「ジョブ」型採用や職種別採用への対応も出ている。日立製作所はジョブ型のインターンを積極的に導入している。24年卒の採用予定者のうち22年度にインターンを経験した学生は約140人と全体の約23%を占める。20年度から一部の部門で試験的に導入していたが、経験者の採用人数は3年で3・5倍に増えた。ジョブ型インターンは入社時の企業と学生双方のミスマッチを防ぐことが狙いにある。
人財統括本部人事勤労本部タレントアクイジション部の大河原久治部長代理は、実施にあたっては現場の理解を得るのに「当初は非常に苦労した。何度も働きかけて必要性を理解してもらった」と振り返る。
ホンダは21年に導入した職種別採用制度が新卒採用の約7割を占める。同制度に合わせて強化しているのがインターン制度で、100程度のコースを設けて、夏と冬で約1000人の学生が参加している。
ルール変更にも対応する。事務系は職場における実務体験が実施期間の半分以上になるようプログラムを調整する。技術系も4年ぶりに対面実施に切り替えたこともあり、職場での実務体験日数が増えて、ルール変更に適合する形となる。
インターンの希望者が全員参加できるよう規模を順次拡大する方針で、23年度の夏は技術系の受け入れ人数を22年度比3割程度増やす。
日本航空(JAL)はタイプ3に該当するものとして、業務企画職で数理・IT実践プログラムや総合体験プログラム、エアラインエンジニアプログラムを実施する。JR東日本は9月実施のインターンは実施回数を2回とし、募集人数も前年比2倍以上とした。ルール変更に対応したプログラムの導入とともに、インターンの受け入れ拡大も進む。
一方、三菱ガス化学は技術系向けで主に大学院修士課程1年生を対象に2日間のワークショップを今夏で3回予定。現状はより多くの学生に自社を見てもらいたいという点から短期間のワークショップが中心だ。「1週間以上の長期インターンの実施も検討する」(同社)としている。
1・2年次から訴求を
インターンが採用に関係するとなれば参加を希望する学生も増えるはず。ただ企業もリソースなどの問題からすべての学生の受け入れは難しい。文部科学省高等教育局学生支援課は「インターンだけで採用が決まるわけではない。終了後も採用選考のプロセスを経るよう(企業に)お願いしている。また参加できなかった学生に対しても別の採用ルートを示すことが必要になる」と説明する。
さらにインターンの長期化で学生が見て回れる企業の数が限られる。学生の就職活動を支援するインタツアー(東京都港区)の作馬誠大社長は「大学1、2年の段階から会社に触れる機会をつくって学生に理解を深めてもらえるかが肝になる」と、低年次からの訴求が有意義なインターンの実現につながると強調する。