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JAXAが初めて人件費を増やした理由

JAXAが初めて人件費を増やした理由

大型基幹ロケット「H3」(JAXA提供)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対する2023年度運営費交付金のうち、人件費予算額が前年度年比2億円増えていたことが分かった。JAXAは人件費の総額を明らかにしていないが、増額されたのは03年の設立以来初めて。これまで大学などからの出向による外部人材や任期制職員で不足人材を補ってきた。正規職員に当たる定年制職員を増やし、技術継承やノウハウを蓄積して宇宙開発を推進する。

23年度運営費交付金の増額分で18人程度の定年制職員を採用できるとみられる。自己都合退職なども勘案して実際の採用計画を立てる予定だ。

03年からJAXAに対する運営費交付金の人件費は毎年同額配分されており、定年制職員だけでなく任期制職員の給与などもまかなっている。定年制職員の人員が少なくても非正規職員が多ければ人件費の負担につながる。JAXAは設立20年を迎えるが、定年制職員(23年4月時点)は設立時の03年に比べて9・7%減っている。

一方で新型基幹ロケット「H3」の打ち上げや火星衛星探査計画「MMX」の探査機の開発などの大型プロジェクトが年々増加。定年制職員の増員を進めてきたが、政府からの運営費交付金の人件費額は03年から増額されず、定年制職員の採用では「非経常収入」というリスクがある財源に頼っているのが実情だ。22年度は新卒31人、中途23人を定年制職員として採用したが、必要数には達していないという。

出向による外部人材や任期制職員を活用しているが、数年で人材が入れ替わり、技術が継承されにくい。こうした状況が文部科学省のJAXA業務実績会議などで指摘され、運営費交付金の人件費増額につながった。

日刊工業新聞 2023年08月03日

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